あなたは知ってる?裁量労働制とその課題

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(写真:http://e-multisistemas.com/

皆さんこんにちは!最近ニュースで「裁量労働制拡大今国会断念!!」と流れていました。

きっとたくさんの方々がこの決定に関して色々な意見をお持ちになったんだろうなと思うわけですが、正直勉強足らずな筆者に関しては…

筆者「裁量労働制?(´・ω・)ナニソレオイシイノ??」

という感じでして筆者自身このままじゃいけんと思うわけです。

という事で今回は裁量労働制について見ていきたいと思います!

それではレッツゴー!

1. 裁量労働制って何だろう

裁量労働制とは、実際の勤務時間とは関係なくあらかじめどれだけ働いたのかをみなし時間として決めておきその時間に基づいて給料を払うというものになります

具体的に言うと、普段の働き方だとある日5時間、次の日10時間働いたら5時間働いたときは5時間分の給料を10時間働いたときは10時間分の給料が支払われるわけですが、裁量労働制においてみなし時間を8時間と決めていた場合、5時間働こうが10時間働こうが8時間働いたものとして処理され、8時間分の給料が支払われることになります。

また、この裁量労働制は主に二つの種類に分けることが出来ます。

ア) 専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは、業務の専門性や効率性の観点から労働時間の管理が不適であると認められた業種に対して許可されている裁量労働制です。

主な業種には弁護士やデザイナー・公認会計士があります。詳細は以下の表を参照ください。

(1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2) 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務
(3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
(4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6) 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
(7) 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
(8) 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
(9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10) 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
(11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12) 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
(13) 公認会計士の業務
(14) 弁護士の業務
(15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16) 不動産鑑定士の業務
(17) 弁理士の業務
(18) 税理士の業務
(19) 中小企業診断士の業務

 (出典:厚生労働省

 

 イ) 企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、主にホワイトカラーの労働者を中心に、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした裁量労働制のことです。

これら、二つの裁量制の導入にはどちらにおいても労基法に基づいた手続きが必要になります。また、特に企画業務型裁量労働制に関してはその手続きに加えて、労使委員会における5分の4以上の賛成も必要となります。

(手続きの詳細に関してはこちらから→http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/kikaku/index.html

2. 裁量労働制の課題

裁量労働制の導入は業務の効率性を上げることなどに貢献しており良い影響もあります。しかし、同時にいくつか課題も存在しています。

ア) 残業代や休日手当に関する勘違い

 裁量労働制となるとあらかじめ自分のみなし勤務時間が決まっているためにその時間より長く働いても残業が出ないと思ったり、休日出勤も手当てが出されないと勘違いしてしまう人がたくさんいます。

さらに悪いことに、その勘違いを利用して不当に雇用者を働かせようとする人もいます。

しかし実際のところを言うと残業代・休日出勤の手当どちらももらうことが出来ます。

まず、残業代に関しては一日8時間、週で40時間以上働いたときに支払われます。つまり労働裁量制におけるみなし時間が9時間であった場合は8時間を超えた分の1時間に関して残業代の支払いを要求することが出来ます。

ただし、仮にみなし時間が9時間であった場合にはいくら残業をしても残業時間は一時間になってしまうので注意が必要です。

休日出勤の手当てに関しても、裁量労働制は労働日の労働時間を一定時間とみなす制度ですので、休日に働いた分の賃金は別に精算することになっています。

イ) 実態の労働時間とみなし労働時間がかけ離れている

 労働裁量制においてみなし時間を適切に設定することが出来ればよいのですが、中には使用者からの圧力で不公平な労働時間にされてしまうことや、そもそも実態の労働時間を把握できていない場合などがあります。これでは逆に労働と賃金の不公平さを拡大してしまうことになります。

そしてこの問題が労働裁量制において最も多い問題と言われています。解決のためには労働組合やその代表者に苦情を言うだけではなく、労働基準監督署や弁護士といった専門家の助けを借りる必要があります。

ウ) 業種の縛りがある

 上記したように労働裁量制の導入には業種の縛りがあり、どんな仕事でも導入できるという事ではありません。

しかし、裁量労働制の導入により企業の残業代を削減できることから違法な方法で労働裁量制を導入する企業もあります。

3. 何故裁量制拡大が今国会で断念されたか?

 最初に書いたように今国会での裁量制拡大は断念されたわけですが、果たしてその理由とは一体何なんでしょうか?

その答えとして報道されていた首相のコメントは「裁量労働制に関わるデータについて、国民の皆様が疑念を抱く結果になっている。裁量労働制は全面削除するよう指示した」というものでした。

では裁量制に関わるデータとは一体何なのか?

その一つにはこれがある。

裁量労働制で働く人の労働時間は、平均的な人で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」

これは安倍総理が一月の衆議院予算委員会で裁量制が長時間労働の助長につなではないかという意見に対して行った答弁の一部である。

ここにデータという文言が使われているのが見えると思うが、労働裁量制に関わるデータというのは裁量制の実態把握などに使われたこのようなデータを指しているのだ。

そして現在そのようなデータにたくさんの不備が見つかっているのだ。一つ二つではない、その数は百を超えている。

具体的なものを一つあげると、同じ人の残業時間が1週間よりも1カ月の方が短いという謎過ぎるデータが見つかっている。(´・ω・)ドユコト?

これに対しては野党などからも強く指摘を受けたわけであり、これを受けた与党はもう一度実態調査からやり直していくということで、今国会での裁量制拡大を断念するに至ったのである。