世界最大の家具メーカーIKEAのマーケティングミックスってどんな感じ?

皆さんこんにちは!

先日筆者はIKEAのほうに行ってきました!やっぱりIKEAの北欧的なデザインの家具や雑貨は見てるだけでも楽しくなりますよね~(^O^)

ただ、IKEAで買い物してしているときに筆者が感じたのはどうしてこんなにもIKEAは世界的に成功しているのだろうという事でした。

というわけで今回は、IKEA成功の秘密として彼らの基本となっているマーケティングミックスを見ていきたいと思います。それでは行ってみよー!

 

1. マーケティングミックスとは

 マーケティングミックスの定義は国の内外問わず様々なものがあるが今回この場では「誰に、何を、どのように、販売するかに関わる活動を具体的に表したもの」とする。また、マーケティングミックスは4Pとも呼ばれている。

4Pとは、Product(商品政策)、Price(価格政策)、Promotion(プロモーション政策)、Place(チャネル政策)の頭文字をとったものである。

 ・Product(商品政策)…どのような製品を売るのかに関わる活動。ex)ブランドイメージ、商品の機能、パッケージなど

 

・Price(価格政策)…どのような価格で商品を提供するかに関わる活動。ex)販売価格、割引など

 

・Promotion(プロモーション政策)…どのように商品を広告していくかに関わる活動。ex)コマーシャル、イベントなど

 

・Place(チャネル政策)…どのように商品を届けるかに関する活動。ex)チャネル、在庫移動、調達など

 

今回はこの四つの観点からIKEAマーケティングを分析してみたいと思う。

 

2. IKEAについて

具体的なマーケティングについて見ていく前にIKEAの歴史を簡単に見ておきましょう。

この企業の出発は、創立者イングヴァル・カンプラードという人物が17歳の時に始めた雑貨店とされている。カンプラードは若くから商才あふれる人物であり5歳のころにはマッチを約100箱も仕入れてそれをすべて売り切っていたという。

最初小さな雑貨店であったIKEAは家具の通信販売によって売り上げを順調に伸ばしていたものの、当時の通信販売にはまだまだ問題点も多く次第に売り上げは伸び悩む。

カンプラードはパートナーのハンソンとの長い協議の結果、通信販売において課題となっていた商品品質に対する顧客の信頼を勝ち取るため、商品の展示場を設けることや店において取り扱う商品を家具に絞り事務用品などを商品から外すことを決めた。

また、カンプラードはカタログを作り客が簡単に商品を選べるように努めた。これらの努力により、カタログで商品を選び、品質が気になったら展示場にいく、といったシステムを作ったのである。

品質が確認できてかつ通信販売の特徴でもある低価格となると、魅力的でないはずもなく、1953年に展示場がオープンした後54年から55年にかけては売り上げが倍増した。

しかしながら、IKEAの低価格商品は地元の同業者の商売を邪魔していたのも事実であり、そうしたIKEAに反感を持つ業者は結託し、家具販売組合はIKEAと取引している家具メーカーに対して取引中止をせまる圧力をかけ、多くのメーカーはIKEAとの取引を断念することになったのだ。

しかし後にカンプラードが「危機が活力を生んだんだ、そのために常に新しい解決策を見出すことができた」と語るように、海外メーカーとの提携、高品質かつ低価格な商品を供給するための製造・運搬・販売システムの開発などを行い、この危機を乗り切ったのである。

その後は、順調に売り上げを伸ばし海外展開を進め、現在では世界最大の家具量販店となっている。

 

3.  IKEAマーケティングミックス

それではここからは具体的なIKEAのマーケティングミックスについて見ていこうと思う。

 

ア) IKEAの商品政策(Product)

「北欧の中ではIKEAを強調しろ、北欧の外に出たらスウェーデンを強調しろ」という創業者カンプラードの言葉から考えても分かるように、IKEAの商品にはスウェーデンという国がコンセプトとして強く押し出されている。

これは、国際市場においては品質や企業の宣伝だけではなくその会社の母国のイメージも大きくブランドイメージに関わるという現状が大きな要因となっていると言えるだろう。

例えば、メイドインジャパンと書いてあるだけで品質が高そうな気がしたり、メイドインチャイナと書いてあるだけでリーズナブルな商品を想起したりすることを考えれば理解しやすいであろう。

では、スウェーデンという国にはどのようなイメージが付随してくるのだろうか。

第一に思いつくのがスウェーデンが世界でトップレベルの男女平等社会であり、また世界屈指の福祉国家で相互扶助が行き届いているという点である。これらはスウェーデンという国にあたたかなイメージを付している。

加えて、スウェーデンの気候も大きな影響を持っているだろう。雪深いこの国では家の中で暮らす時間が他国と比べてかなり多いということから、北欧の国全般に共通することだが家の中を快適に、また明るく暮らすためにインテリアが発達し、おしゃれなデザインが多い。

これらは現在北欧インテリアと聞いただけでオシャレなイメージと結びつくことに大きく寄与しているのである。

よってまとめるとIKEAスウェーデンという国を商品の大きなコンセプトとして打ち出すことにより、商品にあたたかな、それでいてオシャレなイメージを付していると言える。

 

イ) IKEAの価格政策(Price)

 IKEAは創業当時から一貫して低価格というのを徹底している。創業者のカンプラードも「値段を下げるためならどんな苦労も厭うな。他社とはっきり差をつけることが至上命題だ、すべての部門においてわが社の商品は圧倒的にお買い得でなければならない 」といっていた。

おそらくすべての人に共通することだが、新生活や部屋のリフォームをする時家具やインテリア用品をそろえるのはかなりお金のかかることだ。故に、家具・インテリア用品において低価格というのは一般向けに大きな魅力となっているというのは言わずもがなであろう。

では、IKEAの低価格商品、これらははたしてどのような取り組みによって実現されているのだろうか。これについては、調べてみると非常に多くの取り組みがあることが分かった。すべて書くとかなり長くなってしまうのでその中のいくつかを今回は紹介していきたいと思う。

 

α)フラットパック

ikea.com

まず一つ目は、フラットな商品デザインと梱包である。フラットパックというのは聞いたことがある人も少なくないと思うが、IKEAではなるべく商品を平らになるように梱包することで輸送・保管時にできるだけトラックや倉庫内の空間を効率的に活用することができるようにしコスト削減をしているのだ。 

 これは梱包にかぎらない。例えばIKEAのじょうろはすべて積み重ねることができるようにデザインされている。これもフラットパックと同様な意図によるものである。

確かに、運送に適したデザインにすると装飾があまりできなくなってしまうという意見もあるだろう。

しかし、そもそも性能向上を伴う革新的デザインとは異なり、装飾を目的としたデザインは付加価値が約5%とされそこまで高くないのである。

 

β)異業種との提携

 二つ目は異業種との提携である。IKEAは家具メーカーだけではなく、家具を製造したことのない業種や業者とも業務提携を結んできた。

この理由は、新しい技術を獲得することで現在よりもより安い値段でよい品質の商品を作るためである。

具体例を一つ挙げよう、IKEAはあるロングセラーとなっている椅子をもともとポーランドの工場で生産していたのだが、材料のブナの木の価格が上昇したことにより商品の価格が上がってしまったのである。

IKEAの経営陣はこの椅子をプラスチックで作ることができないかと思い、様々な国の企業を調査し、あるスウェーデンの化学会社が可能であると突き止め、椅子の製造コストを下げることに成功したのだ。

 

 ɤ)ドゥー・イット・ユアセルフ(Do it yourself)

 最後に三つ目は、ドゥー・イット・ユアセルフの精神である。

IKEAでは家具を購入する作業の80パーセントは客が自分でやる。あれこれ見て回って、探し出し、望みの品を棚からおろして、レジへ運び、自分の車に積んで家に持って帰る。そして持ち帰った部品を組み立てて家具を完成させる。

また、IKEAでは食事もセルフ様式である。このようにして客が家具の生産活動に参加することにより、人的コスト削減や工場での生産工程の短縮といったメリットがあり、低価格の実現に寄与している。

もちろん人によってこれは面倒さや不親切さを感じるかもしれない、しかし裏を返せば店員が付きまとうことがなく、自分の家族や知り合いとあれこれ今後の生活を予想しながらゆっくりと買い物できるのがうれしいと感じる人もいるだろうし、IKEAのトイレには長い購入時間を見越しておむつが備え付けられていたりと、サービスが著しく欠けているとは言えないだろう。 

 

 ウ) プロモーション政策(Promotion)

 つづいてはプロモーション政策(Promotion)についてである。

IKEAのプロモーションで一番注目すべきなのはやはりIKEAカタログであろう。IKEAのホームページでは2017年の「『IKEAカタログ』は33の言語に翻訳され、48の国で配布され、約2億5500万の人に届いています。」とある。とんでもない数である。

どうしてこれほどまでにIKEAのカタログが世界中で人気なのだろうか。

その理由は、読者がカタログによってのんびりとくつろいだ、そしてかつオシャレで快適な空間を感じることができ、美的感覚が感化されることや、家具のカタログという枠を超えたメッセージがこのカタログの中には存在しているという点にあると思う。

短く簡単に言えば、IKEAのカタログは見ること自体に楽しみを感じられるのである。

下の二つの写真を比較してみよう。

ikeaカタログ2016 に対する画像結果

↑(写真:IKEAカタログ2016)

 

ニトリカタログ2016 食器 に対する画像結果

↑(写真:ニトリホームページ)

 

二枚目の写真の場合、商品は見やすいかもしれないが、いかにも撮影用に作られた空間に感じ、商品を見ること以外に楽しみはない。しかし、IKEAのカタログのほうは生活感を感じられるのではないだろうか。

理由としては、お皿には食べかけの食べ物がのっているし、そもそも人が登場している。現在写真の中では、食事中なのだろうか、一番右に写っている両手は子供っぽい、家族なのだろうか。この写真の中にあるスト―リーを感じることができる。

 ほかにも、IKEAのカタログには無造作に積み上げられたCDやクローゼットに若者好みの洋服が掛けられていたりと、様々なシチュエーションを感じられる小細工がしてある。IKEAのカタログはこういった方法でオシャレかつリアルな生活感をみごとに描き出し、消費者はIKEAの商品に囲まれた空間に対して、知らず知らずのうちに憧れのようなものを植え付けられているのである。

例えば現在、日本では核家族化が進行しているわけであるが、日本の消費者が上の写真を目にしたとき、彼らはIKEAの商品に目を向けるだけでなく、大人数で食卓を囲むという楽しそうな空間も同時に感じ、経済的な理由から子供を多く持ちたくても持てない人にとっては理想像のように思えるだろう。もちろん、その場面が理想なのであって、IKEAの商品は関係ないだろうと思う人もいると思う。

しかし、例えば安いお皿であったとしても、京都の老舗割烹料理屋で、熟練の料理人が最高の料理をその皿にのせて持ってきたとすると、なんだかお皿までも周りの雰囲気に引っ張られて高く感じるというのは理解できるのではないか。IKEAがカタログにおいてオシャレでリアルな生活感を用い消費者の商品イメージを向上させていることは間違いないだろう。

 また、先ほど言ったようにIKEAのカタログにはメッセージやテーマといったものも存在している。例えば、2016年のカタログのテーマは「出かけるよりも、楽しいかも」2017年は「Inspired by EVERYDAY, Designed for EVERYDAY」IKEAのカタログではこのようなテーマをもとにして、毎日のライフスタイルを彩る空間づくりをカタログの中で提案していくのである。

故に、IKEAのカタログには単にカタログとしての機能だけではなくその読みごたえは自分のライフスタイルや美的感覚向上につながる『雑誌』を読んでいる感覚を覚えさえするのである。

 

エ) チャネル政策(Place)

 最後、四つ目はチャネル政策(Place)についてである。

IKEAのチャネル政策で大きな役割を果たしているものとしてはフラットパックが挙げられるが、これについては価格政策における低価格を実現するための取り組みとして紹介したのでここでは省略する。

では、他にIKEAのチャネル政策を支えているものとしてどのようなものがあるのだろうか。

それに対する一つの答えはイケアディストリビューションセンターの存在である。

イケアディストリビューションセンターは一特定の地域におけるロジスティクスの集積拠点であり、日本では愛知県に存在している。

海外のサプライヤーから出荷された家具や雑貨の多くは一度IKEAのディストリビューションセンターに集められ、そこから各地のIKEAストアへと配送される。

IKEAのディストリビューションセンターでは常に各店舗へ迅速に配送が可能であり、IKEA各店舗の在庫状況を最良に保つことに寄与している。

IKEAはこうしたロジスティクスにおける拠点を世界中に展開することにで、流通コストや在庫コストを削減しているのである。

 

4. 筆者談

今回IKEAのマーケティングミックスを見ていく事で多くのIKEAの魅力に気づくことが出来た。しかし、同時にIKEAの課題も見えてきた気がする。

IKEAは全世界に低価格で商品を届けるために多くの努力を行っているが、例えば日本を例に見てみるとニトリ無印良品などのような低価格を売りにしている企業はたくさんあり、IKEAがそのような企業と比べて価格競争に勝利しているわけではないのだ。

今後IKEAが日本市場で生き残っていくためには低価格を実現し続けていくだけではなく、IKEA商品のコンセプトをしっかりと生かして他社の商品と明確な差別化をしていく事が求められる。

IKEA商品は安いから欲しい商品なのではない、IKEAの商品だから欲しい商品であるべきなのだ。消費者にとって欲しいと思った商品が安いことほどうれしいことはないだろう。