【投資・金融用語】アニマルスピリットとは何なの?

f:id:jeconomy:20200315161831j:plain

アニマルスピリットとは?

 

アニマルスピリットとは、

経済活動における必ずしも合理的に説明することが出来ない、不作為ではなく作為を促す心理的衝動を指す。具体的には、数学的には大きなリスクが存在していてもリターンを求めて衝動的に投資する場合のような予測不能で不合理な行動をする心理を指す。ケインズの著書「雇傭・利子および貨幣の一般理論」の第12章では投機の不安定さについて考察されており、その際使用された。

 

ケインズは投機の不安定さについて、投機それ自体から起因する不安定さとは別に、人間の心理要因からくるものがあると主張する。企業や投資家が経済活動において判断を下す際(例えば将来の利益を期待した投資など)、その決断は必ずしも数学的な期待によってなされるものではなく、むしろそうした判断のほとんどは自然発生的な衝動(アニマルスピリット)に基づくのである。

 

特に、ケインズの生きていた時代は個人投資家による株式保有が主流だった。個人投資家は殆どが企業経営や経営状態の評価方法を知らないので、市場における一過性の出来事であっても、衝動的な取引を起こしてしまい、過剰で合理性を欠いた短期の市場変動を起こす要因になってしまうのである。

 

しかし、ケインズはアニマルスピリットについて「すべてが不合理な心理の波に依拠する」とは決めつけないようにも主張している。

 

特に長期の投資に関しては、最終的な生涯にわたる投資の成績はエコノミクスの影響によるものであると述べており、市場の心理を予想して得る投機的なリターンではなく、資産の存続期間における見込み収益による投資的リターンの重要性を説く。

 

現代のアニマルスピリット

現代におけるアニマルスピリットとして参考にになるのは、2001年、2011年にそれぞれノーベル経済学賞を受賞したジョージ・A・アカロフロバート・シラーの共著『Animal Spirits: How Human Psychology Drives the Economy, and Why It Matters for Global Capitalism』だろう。

 

本著は、ケインズの提示した「アニマルスピリット」と行動経済学という分野の成果を組み合わせて、1991年頃のS&L危機、2001年頃のエンロン問題、2007年頃のサブプライムローン問題と言った様々な経済問題について考察したものである。

 

日本でも、週刊ダイヤモンドの2009年ベスト経済書ランキングで1位に輝いた歴史がある。

 

本著の中ではアニマルスピリットをケインズの提示した概念から発展させ、従来の経済学が想定する合理的経済人(ホモ・エコノミクス)の行動原理からすると非合理的な心理的・感情的要因全般をアニマルスピリットと定義し、さらに「アニマルスピリット」をconfidence, the desire for fairness, corruption and bad faith, the money illusion, storiesといった5つの要素に分解して考察している。

 

 

Confidence(安心):

  安心を感じられる印象

 

The Desire For Fairness(公平):

 自己の経済的利益の追及を妨げる精神的要因

 

Corruption and Bad faith(腐敗・背信:

 相手をだますような行為

 

The Money Illusion(貨幣錯覚):

 インフレやデフレの影響を無視してしまう精神的な傾向

 

 Stories(物語):

 根拠がない繰り返し述べられる話に乗せられる事。例)住宅価格は上昇し続ける。

 

 ちなみに、アニマルスピリットは経済用語として有名だがその歴史は古く、ケインズの生きていた時代よりもはるか昔の古代ローマ時代に使用されていたことが分かっている。また、ジェーン・オースティンやベンジャミン・ディズレーリらの小説家の作品の中でも「歓喜」という意味で登場している。

 

参考書籍

 

 

 今回参考にさせていただいた『アニマルスピリット~人間の心理がマクロ経済を動かす~』は刊行された2009年当時、金融危機で途方に暮れていた当局に対して独自の分析と鋭い政策提言を行い注目を集めたとともに。経済の専門家でない人でも読める経済書として世界各国で人気になりました。

 

興味のある方はぜひともチェックしてみてください!!

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

よろしければ読者登録・記事の拡散よろしくお願いします!!