『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録③第三章(株価はこうして作られる)

皆さんこんにちは。

 

この記事は、『ウォール街のランダムウォーカ―』第三章(こうして株価は作られる)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

jeconomy.hatenablog.com

 

前章、第二章では過去のバブルを振り返り、投機的取引の誘惑に打ち勝って長期的なリターンを目指すことの重要性等を学びました。

 

第三章においても引き続きバブルという現象について述べられています。ただ、前章との違いは、チューリップバブルや南海会社泡沫バブルは一般市民の投機的行動にフォーカスした内容であったのに対し、第三章で扱われるバブルは機関投資家のようなプロフェッショナルを中心としたものになっています。

 

果たして、

証券取引・投資のプロである彼らならば、バブルという名の市場の狂気から逃れることができるのでしょうか?

 

プロも例外ではない

結論から申し上げますと、投資のプロフェッショナルであっても市場の狂気から逃れることは出来ないでしょう。

 

それどころか、これまで歴史上見られてきたバブルには少なからず機関投資家のようなプロがその原因の一端を担ってきたことは明らかなのです。

 

 実際、プロの投資家たちも一九六〇年代から九〇年代にかけて、いくつかの明らかに投機的な動きに加担してきた。そういう場合、機関投資家が株式を積極的に買ったのは、ファンダメンタル価値価値理論に照らして株式が過小評価されていると感じたからではなく、自分たちよりも愚かな連中がより高い値段で買うだろうと予想したからにほかならない。(P62)

 

このことをより理解するために、1980年代のアメリカで起こった新規公開株(IPO)ブームを見ていきましょう。

 

1980年代のアメリカIPOブームにおいて最も中心的な役割を果たしたのは、バイオテクノロジー株でした。人口増加や環境問題などの社会問題解決への期待から、連日メディアではバイオテクノロジーがもたらす可能性について話されていました。

 

そんな社会情勢の中でバイオテクノロジーへの関心の高まりは、バイオテクノロジー株の価格にも反映され始めるのです。

 

1980年に株式公開されたバイオ業界最大手のジェネンテックは、株式売り出し後わずか20分で価格は三倍にも上昇。

 

これは、バイオテクノロジー株に対する期待を加速させ、バイオテクノロジー株ならばとりあえず買っておこうといった投機的な取引を多く誘引してしまいました。

 

結果、

怪しい企業への投資が増えるだけではなく、なかには企業の売り上げの何十倍もの株価で取引されるなど、とても合理的な投資行動とは感じられないほどに市場は加熱してしまったのです。

 

もちろん、

結末は皆さんのご想像通り悲劇的なものです。

 

1980年代半ばにバイオ株が全体的に4分の3程度の価格下落を記録、追い打ちをかけるように1987年には市場全体の下落にも遭遇。

 

こうしてまたしても多くの人々が、市場の狂気に飲み込まれてしまったのでした。

 

え、

いやちょっと待って、プロはどこにでてきたの?

 

もちろん

それについてもきちんと言及していきます。

 

金融市場における特徴の一つには、市場に投機的な需要がある場合、その需要を満たすための手段を即座に用意できてしまうというものがあります。

 

そして、

IPOバブルのような投機的な取引の需要を満たすためには、株式公開を手伝ってくれる証券会社の存在が不可欠なのです。

 

重要な点は、

IPOを販売する証券会社にとっては、IPOが売買されさえすればその手数料が利益となるので、市場が求めるがままにIPOを用意することには大きなインセンティブが存在してしまうということです。

 

簡単に言えば、

”危ないかもしれないけど投資家がIPO欲しいって言ってるんだから用意しますよ。

別に、証券会社は手数料で稼げるので損しませんし。”

 

ということですね、

 

文中にもこのような表現がありました。

 

タバコの箱に健康への害が注意書きされているからといって、それが愛煙家にたばこをやめさせることにはならないのと同様、「この投資はあなたのお金のために危険です」という警告も、どうしても投資家が自分のお金をつぎ込みたいと固く決心している場合には、決してそれを止めることはできない。(P65~66)

 

果たして、

粗悪なIPO株を買う方が悪いのか、売る方が悪いのか、この点も一つ大きな論点ではありますが、何はともあれ、金融市場のプロであっても投機的な市場の狂気に一枚かんでいるという事は理解していただけたのではないでしょうか。

 

もう一つ、

アナリストの面からも見ておきます。

 

投機的な価格上昇は砂上の楼閣理論によって説明されることが多いわけですから、証券分析のプロフェッショナルであるアナリストについては、証券の実質的価値(ファンダメンタル価値)を理解することが可能で、そのためアナリストは市場の狂気には飲み込まれないのではないかとも考えられます。

 

砂上の楼閣理論・ファンダメンタル理論については第一章で、

jeconomy.hatenablog.com

 

しかし残念ながら、

歴史上、証券分析のプロであるアナリストであっても市場の脅威から逃げきれなかった例はたくさんあるようです。

 

1980年代のバイオテクノロジー株ブームも例外ではありません。

 

アナリストの予想によれば、インターフェロン*の売上高は、一九八二年に一〇億ドルを超えるというものだった。現実には、この成功商品の売上高は八九年にようやく二憶ドルになったに過ぎなかったが、砂上の楼閣を築く妨げになるものではなかった。アナリストたちは、あと二年たてばバイオ会社の収益は飛躍的に伸びると予想していた。そして、その予想は裏切られ続けた。(P92)

*インターフェロン抗がん剤の一種

 

私はこの馬鹿げた水準になった株価を、証券アナリストたちがどのように正当化するのかを興味深く読んだものである。(P92)

 

アナリストだからといって実質的な価値を求められるアナリストばかりではないことが分かりますね。

 

知らず知らずのうちに、間違った状況に対してそれらしい統計的分析に基づいて予想を立ててしまっているのですね。

 

もちろん、

これはアナリストだけに見られる誤りではないのだと私は個人的に感じます。

 

人間には、自分のミスに対しては外的な要因を見つけてしまう傾向(自己奉仕バイアス)や、たまたま自己の仮説に一致しただけの事を重要視してしまう傾向(確証バイアス)があることが科学的に認められています。

 

アナリストもプロフェッショナルであれ、認識の間違いを起こすことは想定されて然るべきことでしょう。

 

とは言え、

アナリストの誤った予測もまた、一般投資家の投機的行動に拍車をかける一要因であったことについては間違いのない事でしょう。

 

そういえば、

アメリカの著作家であるマーク・トウェインによって広められた言葉に

 

”世の中には3種類の嘘がある: 嘘、大嘘、そして統計だ”

 

というものがありましたね。

 

数字がもっともらしいなんて理由で自己の判断を誤らないように気を付けたいです。

 

まとめ

・株価には、その時の投資スタイルや流行りが上乗せされることがある。

 

・プロであれど市場の狂気にさらされる

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

 

備忘録④はこちらから!!

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