『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑧第八章(ファンダメンタル主義者のお手並み拝見)
皆さんこんにちは。
この記事は、『ウォール街のランダムウォーカ―』第八章(ファンダメンタル主義者ののお手並み拝見)の備忘録になります。
備忘録①は以下よりどうぞ!
『ウォール街のランダムウォーカ―』第七章では、テクニカル主義者に対する筆者マルキールさんの意見について見ていきました。
結果的には、 テクニカル主義に関してあまり好意的な意見を聞くことが出来ませんでしたが、ファンダメンタル主義についてはどのような意見を持っているのでしょうか。
見ていきましょう。
ウォール街VS学者
マルキールさん曰く、ウォール街のプロたちはみなファンダメンタル主義だとのことです。では、実際にファンダメンタル主義の人たちはどのような意見を持っているのでしょうか。
ウォール街の多くが支持する見方は、ファンダメンタル分析は、時を経るにつれ、ますます強力かつ巧妙になってきているというものである。(P236)
将来の方向性を予想するために、アナリストは通常、過去の軌跡をたどることから始める。あるアナリストの言葉を借りれば、「過去に実現された利益成長は、将来の利益成長を占ううえで、最も信頼できる指標だ」というわけである。(P238)
なるほど、確かに時代の流れとともに研究が進み前よりもよい運用成績を収めることが出来ているのであればファンダメンタル分析の発展は認められそうですし、過去の収益や利益成長は投資の判断材料として良く用いられていますから、ファンダメンタル主義者のこのような発言は分かるような気がします。
では、
当のマルキールさんはこれに対して何と言っているのでしょうか。
しかし、このような答えは学者の世界では落第である。過去の成長を分析したところで、将来の成長を予想する役には立たないのである。(P238)
あら~
またしても対立するような意見なわけですね。
でも、
この意見も良く分かります。
ある一時期においてその企業の成長が良かったからといってその成長が将来においても約束されるわけではありませんよね。その理由としては、市場の盛衰や、成長するにつれ会社の規模が大きくなると成長の余地がなくなっていくこと、市場規模自体が大きくなっていかない限り利益が頭打ちになることなどが挙げられますね。実際、市場が好調であった1990年代のアメリカでさえ、毎年の安定成長を達成できた企業は全体の13%程で、2000年初頭においては高成長を維持できた企業が一社も無かったみたいです。
証券アナリストが、長期間一貫して高成長を続ける企業を予見することはできない。なぜなら、そんな企業は存在しないからだ。(P239)
ここまで言われたらアナリストだって黙っていないわけですよ。
「我々の分析が単なる過去の分析だなんて冗談じゃないよ!!」
というわけですよ、
そこで、
アナリストは学者に対してもっと現実に即した調査をすべきだと言うわけです。
ごもっともな事です。
例えば、
戦争で人を殺す心理負担を調べるために、刑務所にいる凶悪殺人犯にインタビューするのは当然正しい調査方法とは言えませんもんね。
で、
マルキールさんは言うわけですよ。
「ええで、受けてたとうやないか」(妄想)
マルキールさんはアナリストの反対意見に対抗するために様々な条件を付して再調査をします。例えば、予想期間を変えたり、業界を変えたり、手法の複雑さを変えたり、アナリストの能力を変えたり。
結論、
アナリストの予想は
素人のシンプルな分析手法と比べても、
安定的な産業についてであっても、
短期予想であっても
長期予想であっても
どんなに優秀なひとだとしても
ちゃんとできているとは言えない。
というものでした。
え~まじで~??
別にアナリストの肩を持つわけではありませんが、優秀な彼らの業績予想がそこまで信頼性の高いものではないというはちょっと信じられない気持ちもありますね。
とはいえ、プロフェッショナルだからと言ってミスがないなんて考える方がナイーブな考え方かもしれないとも思いました。例えば、防空レーダーを監視する場合、2時間続けると発見率は二分の一にも減少するというデータがありますし、2004年には世界的に有名な医学専門誌『Archives of Internal Medicine』に、フランスの医師らがICU(集中治療室)で死亡した人々の剖検結果についての論文を掲載し、そこには生前診断の約30%は誤診だったと書かれていました。
理由付けが何であろうと、専門家だからというだけですべてを任せることはしないべきでしょうね。
以前、あるドキュメンタリーでハイパーレスキューの隊長さんが部下に対して信用はするが信頼はしない、と言っていたのをよく覚えています。
なんでもそうですが、主体性は重要ですよね。
アナリストが予想を誤る要因
本文ではどうしてアナリストが予想を間違えてしまうのかその要因が書かれていたので簡単にまとめておきましょう。
①ランダムに発生する事件:
市場の予想が株価に織り込まれている場合は大きな値動きは期待できません。そのため、一般に市場が大きく動くのは期待や予想が裏切られた場合です。期待や予想を裏切ることを予想するなんて無理ですよね。
②クリエイティブな会計による疑惑の利益捻出:
『賢明なる投資家』では、投資家に対するアドバイスとして会計情報の脚注をきちんと読めというものがありましたね。なぜなら、企業が隠したいことを知るヒントが隠されているからというものでした。
③基本的な能力の欠如:
流行している方法に沿って分析しているだけ、他人の予想にそって予想しているだけ、このような怠惰なアナリストも多く存在しているのが実情でしょう。
④セールス活動による拘束と運用部門への流出:
最高給のアナリストのなかにはその給料のほとんどを分析業務ではなく、機関投資家に対するセールスや、ファンドマネージャーとしてもらう方もいます。その場合、自然と分析に対して割くことが出来る時間や労力が低下するのは明白でしょう。
時代の流れとともに、ブローカー業務から投資銀行業務へと事業の重要性は移ってきました。しかし、こうなると顧客である企業のご機嫌取りが必要になってくるわけです。”1990年代に入ると、「買い推奨」と「売り推奨」の比率は100対1にまで広がり、とりわけその傾向は投資業務のウェートの高い大手証券会社に顕著であった。”(P255)
ランダムウォーカ―信者として
ここまで、ファンダメンタル主義VS学者という対立構造について見てきたわけですが、マルキールさんはその二つの主張を踏まえて、我々投資家に中間的な意見をとることをお勧めしています。
私としては、それらの中間をとりたい。確かに、投資家はプロのアドバイスに対する信仰について、もう一度見直す必要があるだろう。しかし私は、多くの同僚たちのように、この分野のすべてを否定するところまでは、まだ心の準備が整っていない。(P274)
マルキールさんは、ファンダメンタル主義の人々が継続的に市場に勝つことができないのは明白としながらも、プロの投資が他より優れたパフォーマンスを上げる可能性については認めているのですね。
しかし、
とはいえファンダメンタル主義の人たちが正しい判断を下せる可能性がそうは高くないことは譲れないようですね。
結局、
私たち個人としてはアナリストの予想が当たろうが外れようがあまり影響がでない様なふらふらとした戦略が必要になるのでがないでしょうか。
それもまた、
ランダムウォークという呼称にはあっている気もします。
今日はこの辺で終わります。
まとめ
・ウォール街はファンダメンタルの影響が強い
・学者的にはプロの予想をそこまで評価できない
・結局アナリストが予想を当てようが当てまいがあまり重要なことでは無い。
・主体性をもって投資に臨むこと
ここまでお読みくださりありがとうございました。
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