【待機児童】救世主のはずが…企業内保育園の普及はなぜ進まないのか?結局問題はあれだった!?

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現代日本の深刻な社会問題の一つに待機児童問題がある。この問題が深刻な理由は待機児童問題が女性の社会進出や格差問題といったほかの社会問題に大きな影響を持っているからである。

そんな中、現在注目されている解決策として企業内保育園の創設がある。しかし現状、企業内保育施設は満足のいくように普及しているとは到底いいがたい。企業内保育園には企業にとっても、働き手にとってもたくさんの利点がある。

という事で、この先においてはどうして日本の社会では企業内保育施設がなかなか普及していかないのかについて考察していきたいと思う。

 

 企業内保育園の利点は?

 企業内保育園の利点には以下のものが挙げられる。

  • 優秀な女性人材の確保
  • 人材育成コストの削減
  • 労働環境の改善
  • 授業員の満足度を改善
  • 採用応募者の増加
  • 企業のイメージアップ
  • 他の保育園に余裕ができる

なぜ企業内保育施設の創設は進まないのか? 

企業内保育施設の創設が進まない理由は企業・利用者にそうしようとするインセンティブが働かないような状況があるからだと思う。

企業内保育園設置前のインセンティブ

 企業は経済的な視点から経営の判断をするために、基本的にはお金がかかることはなるべく削減しようとする。ここにまず一つ目の企業内保育施設普及における壁がある。企業内保育施設は簡単に設置できるものではない、なぜならその設置と運営にはたくさんのお金が必要になるからである。具体的には以下のコストがかかる。

・施設設置費 ・維持管理費 ・水道光熱費 ・通信費 ・遊具備品費 ・事務用品費

・衛生管理費 ・保育士の給料 ・保険料

加えて、仕事の量も普段の仕事に上乗せして大幅に増加する。

・保育事務 ・保育計画 ・教育研修 ・保育士の人事労務管理 ・保護者対応

・行政、事故対応 

 

つまりは企業としては企業内保育施設がたくさんの利点を持っていることは十分理解していながらも、そう簡単には設置を進められるようなものではないのである。

企業内保育施設設置後のインセンティブ

 

上記のような問題をクリアし、企業内保育施設を設置した企業がいたとしても、そこにはまだまだ企業内保育施設が普及しない問題が存在している。

先程、企業内保育施設には色々なコストがかかると書いたが企業側はそのコストを利用する社員の給料から天引きという形なのか、月謝という形のか、いずれにしろ利用する社員から回収しようとするであろう。

しかし、ここで問題となるのはその支払いの額である。企業内保育施設においてその利用料は利用する社員の地元の保育園と同程度の料金またはそれ以下でないと金銭的なインセンティブが働かない。

それはかなり厳しい。なぜなら認可保育園の場合は国からの補助金が受けられるため料金はその分割安になっているからだ。もちろんサービス面で差別化することも可能だろうが、その場合保育施設のコストはさらに増加し企業側の負担が増えてしまう。その結果、たとえ認可外保育園だったとしても企業内保育施設よりも割安となり、企業内保育施設の利用者を満足に確保できない。故に運営がうまくいかないと言ったことになる。

また、企業内保育施設も補助金を受け入れる、もしくは認可をもらえばいいじゃないかという声もあるだろう。確かに企業内保育施設であっても国から補助金を受け入れることや、認可をもらって公的資金を受けることは可能である。しかし、実態から言うと補助金を受け取るための条件をクリアするのは簡単なことでは無い。

条件:補助金

 

1.施設の規模

 ・乳幼児の定員は6人以上。

 

2.設置場所

  • 事業所の敷地内
  • 事業所近接地
  • 状業員の通勤経路
  • 従業員の居住地の近隣地

 

3.施設の構造や設備

  • 乳児室、保育室、調理室、便所の設置必須。
  • 二歳未満から小学生前の児童のみ
  • 子ども一人当たり乳児室1.65平米以上、保育室1.98平米以上。
  • 乳児室はパーテーションその他有効なフェンスなどにより区画され、乳幼児が容易に入室できない構造
  • 乳児室、保育室を清潔に保つ
  • 手洗い設備があり、乳児室、保育室、調理室と壁で区画されている
  • 便所が約20人につき1つ以上であること
  • 非常災害時に必要な設備が設けられていること(消火器など)

 

4.医療機関

緊急事態に備えて医療機関との協力体制が必要。

 

5.専任の保育士の配置

入所している幼児数に応じた保育士有資格者の必要配置数を満たす。常時2人以上配置されている。

 

6.専任の看護師の配置(不良児対応型の運営を行う場合)全ての運営時間に看護に対応できる専任の看護師1人が配置されていることが必要。

※最新情報・各自治体の情報は各ホームページをご覧ください。 

 

 以上のように、補助金を受け取ることは企業にとって簡単なことでは無く補助金を用いて企業内保育施設のコストを下げるのは難しいという現状があるのだ。

 母親側のインセンティブ

企業内保育施設が普及しない理由としては企業側の問題だけではなく、母親側のインセンティブも関係している。子育てはとても大変なものである。しかし、現在の日本では女性側がその負担のほとんどを背負っている。昔はそれでもよかったのかもしれない。なぜなら地域コミュニティーのつながりが強く子育てを支援してもらえたからだ。

ところが現代社会ではコミュニティーのつながりはとても弱くなっている。(特に都市部)それ故、子育てをするにあたり職場の保育施設に入れるよりも家の近くの保育施設に預け、ママ友を作ることがとても重要な意味を持つ。子育てには様々なトラブルや悩みが付きまとう。母親としてはその時相談に乗ってくれたり、手助けしてくれる人は職場より家の近くに欲しいものだ。

そしてこのインセンティブが企業内保育施設が普及しない一つの理由なのだ。

 

企業内保育施設を普及させるには?

 それでは企業内保育施設を普及するには今後どのような解決策が必要になるのだろうか。ここまで見てきたように、企業内保育施設が普及しない理由としては企業にコストがかかる事、そのコストを削減するのが難しいこと、母親としては家の近くにママ友がほしい事などを挙げた。

それらを解決することが出来れば企業内保育施設も普及しやすくなるだろう。そして、具体的な取り組みとしては以下のようなことが考えられる。

  1. 国からの補助金を受けやすくする。
  2. 保育のみに限らず母親の育児支援を包括的に支援していく。
  3. 企業内保育施設の設置・運営を専門の業者が一括して請け負う事でコストを削減する。

 しかしながら、1に関しては補助金めあての悪質な保育施設が存在するように企業側がその制度を企業の利益として悪用する可能性もあり、条件の緩和は一概に良いとは言えない。2に関しては結局企業のコストをさらに増加させるとともに利用料も増加してしまうため、企業・利用者ともにインセンティブが働かない。最後の三つめだが一番現実的な話だと思うものの、そもそも現在の日本では保育士の数が全然足りていないため、この方法で企業内保育施設を増やしたところで保育士の奪い合いになり結局誰の得にもならない。

ここまで見てきて結局、待機児童問題の解決には保育士の待遇改善と育成が不可欠であり。短期間で解決できる問題ではないようである。千里の道も一歩から、地道に待機児童を減らしていく事が最も賢いのかもしれない。 

 

                  結論


 とりあえず保育所と保育士増やさないとダメだわ!!


 ここまでお読みくださりありがとうございました!!

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