資産運用の名著『敗者のゲーム』要約・備忘録②第二章(運用機関の本当の役割)
皆さんこんにちは!
この記事は、『敗者のゲーム』第二章(運用機関の本当の役割)の備忘録になります。
備忘録①は以下よりどうぞ。
第一章においては、インデックスファンドがほとんどのプロのファンドよりも、長期的には良い運用成績を残しているという事を学びました。
第二章では、運用機関の役割について触れられています。投資家は運用機関にどのような役割を期待するべきなのか?見ていきましょう。
本著について
内容(「BOOK」データベースより)
投資で成功するというのは、難しい証券分析などの専門知識や経験を身につけることではなく、ましてや短期的に市場を出し抜こうとすることでもない。市場平均利回りを上回る(=市場に勝つ)ことがきわめて難しくなった今、最も簡単かつ結果の出る方法は、インデックス・ファンドを活用することである。全米累計100万部を超えるロングセラーの最新版。プロ・アマ問わず幅広い投資家に向けたメッセージとして、時代を超えて読み継がれる運用哲学のバイブル。
著者
チャールズ・エリス Charles D. Ellis1937年生まれ。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールで最優秀のMBA、ニューヨーク大学でPh.D.取得。
運用機関三つの問題
本著の著者であるエリスさんは、運用機関は自ら三つの失敗を作り出してしまっており、それが投資家の運用成績に関わってくると主張しています。
①運用機関の目的
一つ目の問題としてエリスさんが挙げているのが、運用機関が誤った目標を認識してしまっていることです。
第一の問題は、顧客に対するファンド・マネージャーの使命を「市場に勝つこと」と誤解していることだ。(P30)
市場に勝つことが難しい理由は第一章で述べられていますし、『ウォール街のランダムウォーカ―』、『賢明なる投資家』といった有名な投資書籍でも同様なことは述べられています。
もちろん、このような書籍のおかげもあり市場に勝つことが難しいという事実は、プロの世界でもよく知られることとなりました。
とは言え、いまだに市場平均に勝つことを目標としているファンドマネージャーが存在していることは紛れもない事実なのです。
どうしてなのか?
それはやはり、目を引く成果に思えるからなのでしょう。きっちり投資の勉強をした人であるならば、「市場平均に勝てる」という言葉には、怪しさを感じなくてはいけません。
しかし、
世の中には、あまり投資について知らないけれど退職金や将来の教育資金などの為に運用してみたいという人はかなりの数います。また、現在の日本は投資先が少なく企業や裕福な個人の資金がだぶついている状況があります。そして、お金はあるけど投資はあまり分からないという人は運用機関を選ぶ上で、「パフォーマンス」という要素を重要な決定要素として選んでしまいがちなのです。
とはいえ、
みなさんもご存じだとは思いますが、この「パフォーマンス」という言葉は思いのほか複雑なもので注意しなくてはいけないポイントがたくさん存在しています。以下に一部を示しておきましょう。
①パフォーマンスは過去の結果である。
社会は変化していくものであるし、有効な投資手法は有効であるがゆえに自壊する可能性が高いのです。過去に上げたパフォーマンスが将来において同じパフォーマンスを上げることができる理由にはならないのです。
②どの期間を切り取ったのか?
相場には利益を上げやすい時が存在しています。また、バブル経済のように投機的な熱が過熱している時は、利益が大きく出る傾向があります。しかし、運用成績がいい時の期間だけを切り取って自社のファンドの運用成績として顧客に提示するのは何の参考にもならないのです。
③そのパフォーマンスを上げた以降の成績はどうなのか?
良い時だけを切り取るという②の視点と似ていますが、良いパフォーマンスを上げた、その後のパフォーマンスにも目を向ける必要があります。偶々パフォーマンスが良かっただけなのかを判断する機会になるでしょう。
本文の言及にも目を通しておきましょう。
残念ながら一般にパフォーマンスの議論には、運用で最重要の概念、リスクが考慮されていない。だから、市場に負けているマネージャーの負けの合計は、市場に勝つマネージャーの超過収益のおよそ二倍に達しているという事実も意識する必要がある。(P32)
プロであっても敗者のゲームを戦わなくてはいけない現在ですから、運用機関の目的が「市場に勝つこと」というのは失敗と言えるでしょうし、投資家の側も運用機関に市場平均以上のパフォーマンスを求めることは賢明な判断ではないと言えるでしょう。
②短期収益志向
運用機関に関連した第二の問題点は、時とともにますます短期収益志向が強まっていることだ。(P33)
二つ目の問題としてエリスさんが挙げているのが、短期収益志向の高まりです。
短期収益志向の高まりがどうして問題であるのかに関しては、もちろん長期的な収益を目指すのと、短期的な収益を目指すのではリスクが異なるという点もあります。
しかし、
短期収益志向の高まりの背景には、運用機関のビジネス拡大志向の高まりがあるということを指摘しておく必要があるでしょう。
本文のデータを引用させていただくと、この50年において運用資産額は10倍に増加し、ファンドマネージャーへの報酬は約10倍になり、運用機関の企業価値も高騰している。つまり、運用機関は企業の価値を上げるため、資産の増加を重視する経営にシフトしてきている可能性があるのです。
そして、
残念ながら企業の資産増加は資産運用の観点からはメリットが乏しいと言われています。なぜなら、規模が大きくなるにつれ運用のコストが増大するし、企業も運用にリスクを取りにくくなり安全志向に陥ることで、結果的に運用のリターンが減少してしまうからです。
③運用アドバイスの重要性
特に深刻な運用機関の第三の問題点とは、運用アドバイスの重要性を見失っていることだ。(P35)
三つ目の運用機関の問題点は、運用アドバイスの重要性を見失っていることです。
運用機関もまた敗者のゲームに巻き込まれているわけだから、あまり役に立たないのではないか?
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、
運用機関と個人の投資家を一括りに比べることはできません。なぜなら、運用機関と一般の投資家の間には、投資に関する知識、市場を調査するリソース、高度な数学的テクニックといった圧倒的な差が存在しているからです。
つまり、
投資家としては、自分で調査するよりも運用機関にアドバイスや情報を貰う方がリスクが低い投資になるという事です。
投資家はどのように運用機関と向き合うべきか?
では、ここまで見てきたことを踏まえて、投資家は運用機関とどのように向き合っていけばよいのかについて考えてみましょう。
まず一つ目の失敗(運用機関の目的)に関しては、これを運用機関を選ぶ際の一つの判断材料として投資に生かしていく事が出来るでしょう。
「市場に勝てます!!」
「高い運用パフォーマンス!!」
という謳い文句の運用機関には要注意です。
二つ目の失敗(短期収益志向)に関しては、ファンドの規模や取引コストに注意するとよいと思います。
大きすぎるファンドは運用成績が低下していく可能性がありますし、手数料が高いファンドは無駄な取引やビジネス志向が強すぎる可能性があります。このようなファンドに関しても
ちょっと匂うかな~
と思っておくとより賢明な投資家になれるでしょう。
三つ目の失敗(運用機関のアドバイスの重要性)については、まず投資や運用を考える時に、
・何のための投資なのか?
についてはっきりと自分の中で答えを持っておきましょう。理由はそれによって投資対象や期間、リスクが全く異なってくるからです。
運用機関のアドバイスが重要なものとなる為には、あなたのリスク許容度や投資・運用の目的と合致したアドバイスを受けなくてはいけません。
結婚式のドレスが欲しいのに、ユニ〇ロに行って「この商品はリーズナブルですし、来ていてとても涼しいのでおすすめです」なんてアドバイスをもらっても、そのアドバイス自体はいいものですが、今の自分には何の関係もありません。
重要なアドバイスを引き出すためにも、自分の投資の目的をはっきりとさせたうえで、どのようなアドバイスが欲しいのかを考えましょう。
まとめ
運用機関の失敗
- 「市場に勝つ」という誤った目的
- ビジネス志向
- アドバイスの重要性
向き合い方
- 「市場に勝つ」には注意
- ファンドの規模に注意
- 投資の目的をはっきりと
本日は以上です、最近忙しく更新頻度は落ちてしまっていますが皆さんと学んでいける情報をゆったりと発信していくつもりですのでよろしくお願いします。
ここまでお読みくださりありがとうございました。