資産運用の名著『敗者のゲーム』要約・備忘録③第三章(それでも市場に勝ちたいなら)

皆さんこんにちは。

 

この記事は、『敗者のゲーム』第三章(それでも市場に勝ちたいなら)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ

jeconomy.hatenablog.com

 

『敗者のゲーム』第三章では、市場平均に勝つことを目指すアクティブな運用がどうしてうまくいかないのかについて説明がなされています。

 

ここまで見てきた内容においても、市場に勝つことの難しさは何度も繰り返し主張されてきたわけですが、この章でも市場に勝つことの難しさについて見ていくようです。

 

内容が被るところもあると思いますが、どうして市場に勝つことは難しいのかについてきちんと理解することによって、自己の投資・運用の方針に活かしていきましょう。

 

本著について

 

f:id:jeconomy:20200505140347j:plain

内容(「BOOK」データベースより)
投資で成功するというのは、難しい証券分析などの専門知識や経験を身につけることではなく、ましてや短期的に市場を出し抜こうとすることでもない。市場平均利回りを上回る(=市場に勝つ)ことがきわめて難しくなった今、最も簡単かつ結果の出る方法は、インデックス・ファンドを活用することである。全米累計100万部を超えるロングセラーの最新版。プロ・アマ問わず幅広い投資家に向けたメッセージとして、時代を超えて読み継がれる運用哲学のバイブル。

著者

チャールズ・エリス Charles D. Ellis
1937年生まれ。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールで最優秀のMBAニューヨーク大学Ph.D.取得。

 

 

 

 

タイミングで取引するのはなぜダメなのか?

株式投資のイメージと言えば、チャートの波形を見て、ここだ!!というタイミングで売買する、みたいなものがあります。

 

確かに、本屋さんの投資関連書籍の棚を見ればテクニカル分析に関する本は所狭しと並べられていますし、実際にテクニカル分析を自分の投資の核としている人もたくさんいるでしょう。

 

テクニカル分析とは?

jeconomy.hatenablog.com

 

テクニカル分析を簡単に言えば、株式市場のチャートの流れに特定のパターンを見出し、そのパターンが観測されたタイミングで取引をするというようなものです。

 

本文の言及も見てみます。

収益率を上げる最も直接的な方法は、市場タイミングを的確につかむことだ。昔からこの方法を採用している投資家は、いつ市場へ参加するか、またいつ撤退するかのタイミングをはかり、上昇局面では全額投資し、下降局面では売却を考える。(P37)

多くの人が持っている投資のイメージに合致するようなことが言われていますね。

 

しかし

著者であるエリスさんは、このようなタイミングによる売買は上手くいかないと主張します。

 

理由は以下の通りです。

①取引のほとんどはプロ

 あなたがある銘柄が上がるだろうと思うタイミングで株を買う時、あなたがその株を買うことが出来るのはなぜでしょうか?それはもちろん、その株を売りたいと思う人がいるからです。問題は、あなたに株を売ってくれる人のほとんどがプロの投資家であるということです。あなたが上がると思うタイミングと同じ時に多くのプロがまた下がると予想しているわけです。どっちが正しいのか?それこそ運なのではないでしょうか?

 

②上昇局面の重要性

”投資家は「稲妻が瞬く瞬間」に市場に居合わせなければならない”(P41)

エリスさんの調査によると、1980~2008年の間において、この期間(28年間)のわずか0.25%にしか満たないベストな上昇を記録した10日間に市場に居合わせなかっただけで、リターンが22%低下し、ベストな上昇を記録した20日間(全体の約0.35%)の期間を逃すと、さらにリターンが20%減少してしまうことが分かっている。

 

 

タイミング取引の困難さはコチラの記事も参考に!!

jeconomy.hatenablog.com

 

市場に勝てる場面とは?

では、タイミングによる取引が難しいとして、市場に勝てる場面は全く存在していないのでしょうか?

 

いえ、存在しています。

 

アクティブ運用のこれら四つの形態は、いずれも「他人の失敗の上に成り立つ」という基本的性格を持っている。個別銘柄であれ、特定の株式グループであれ、アクティブ投資家が収益機会を得る唯一の方法は、見落としや過失によってプロの競争相手のコンセンサス予想が誤った時である。(P45)

 

※「アクティブ運用のこれら四つの形態」については、一つはこの記事で紹介したタイミングによる取引のことです、他の三つについてはこの記事では割愛させていただきますので、是非実際に本書を手に取って確認してください。

 

さて、

エリスさんが指摘しているように、市場においても相手の見落としや過失をつくことによって、積極的な取引は報われることがあります。

 

しかしながら、

皆さんに少し冷静になって考えていただきたいのは、以下のような点です。

 

このような判断の間違いはどのくらいの頻度で起こるものなのか?

 

プロの予想を間違いであると確信をもって言えるのか?

 

他の人が自分よりも早くそのミスに気がつくのではないか?

 

こうした問いについて考えたうえで、果たして長期的に利益を上げていくような機会であると皆さんは考えるでしょうか。

 

そんなことはないですよね、市場には確かに積極的な取引が功を奏する場面はありますが、それを利用できるかどうかとはまた別の話です。

 

ファイナンスの教授と学生が交わす有名なジョークを一つ。

 

ある時、お札が道に落ちているのを見つけた学生が、それを拾おうとします。

すると、教授は学生に次のように言いました。

”よしたまえ、もしそれが本物のお札なら、今まで放置されている

はずがないだろう。”

 

まとめ

さてここまでは、積極的な取引で市場に勝つことはなぜできないのか、そしてそのような機会があるとしても有効なものにはならないのはどうしてなのかについて学んできました。

 

では、これを踏まえた上で投資家にはどのような事がもとめられるのでしょうか?

 

長期的に成功する一つの方法は、ミスを減らすことである。(P45)

 

ここで、また『敗者のゲーム』であるという主張に帰ってきましたね。

 

でも、積極的な取引をしても利益に繋がらない以上、どれだけミスをしないかが重要であるというのはその通りのように思えますね。

 

具体的に大切な点については以下の四点を基本的な原則として提示してくれています。

①長期的な資産配分の決定

 

②いつ資金が必要になるか

 

③幅広く分散すること

 

④一貫して忍耐強く

 

 このような点に気を付けて投資を考える事でミスを最小にしていく事が出来ると考えるわけですね。

 

 

今日はこの辺で終わります。

 

ここまで、お読みくださりありがとうございました。