資産運用の名著『敗者のゲーム』要約・備忘録①第一章(運用は「敗者のゲーム」になった)
皆さんこんにちは
この記事は、『敗者のゲーム』第一章(運用は「敗者のゲーム」になった)の備忘録になります。
※尚、本備忘録は筆者の個人的解釈を書き溜めたものであり、投資の誘引や本著の解説といった目的が一切ないことをあらかじめ申し上げておきます。
投資や資産運用に関する書籍としては無類の人気を誇る本著ですが、どのような投資・資産運用に関するヒントを学ぶ事が出来るのでしょうか。
楽しみですね!!
本著について
内容(「BOOK」データベースより)
投資で成功するというのは、難しい証券分析などの専門知識や経験を身につけることではなく、ましてや短期的に市場を出し抜こうとすることでもない。市場平均利回りを上回る(=市場に勝つ)ことがきわめて難しくなった今、最も簡単かつ結果の出る方法は、インデックス・ファンドを活用することである。全米累計100万部を超えるロングセラーの最新版。プロ・アマ問わず幅広い投資家に向けたメッセージとして、時代を超えて読み継がれる運用哲学のバイブル。
著者
チャールズ・エリス Charles D. Ellis
1937年生まれ。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールで最優秀のMBA、ニューヨーク大学でPh.D.取得。
敗者のゲームとは?
『敗者のゲーム』第一章では、本書のテーマでもある「敗者のゲーム」とはどのようものなのかについて説明されています。
敗者のゲームと聞いた時、
皆さんはどのようなものを想像しますか?
私は、勝つことのできないゲームみたいなのを想像してしまいました。結果、全然違かったのですが(笑)
ともあれ、「敗者のゲーム」がどういうものなのか理解するための第一歩として、まずは次の言及について見ておきましょう。
TRW社の著名な科学者であるサイモン・ラモは「勝者のゲーム」と「敗者のゲーム」の決定的な差を、『初心者のための脅威のテニス』という本の中で明確にしている。すなわち、テニスには二種類のゲームがあり、一つはプロおよび天才的アマチュアのゲームであり、もう一つはその他大多数のゲームである、と。(P21)
投資の世界に置き換えて考えると、プロおよび天才的アマチュアとは機関投資家や優秀かつ莫大な資金力を持つ個人投資家のことで、その他大多数とは一般的な個人投資家のことを指していると考えられます。
では、プロとアマチュアではそのテニスにどのような違いがあるというのか?
まず一つ目に挙げられる違いは、ミスを犯す回数です。プロはアマチュアの選手に比べて圧倒的にミスをする回数は少ないのです。そして、二つ目は技術力の差です。プロの選手は、多彩で正確なショット、鍛え上げられたスタミナやスピードで相手の選手を自分の技術で倒すことが出来ます。しかし、アマチュアの選手の場合は、スタミナもスピードもショットの強さや正確さも劣ります。
そして、
こうした差は勝負の命運を分ける要因に違いをもたらします。
プロは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失う。(P21)
プロの選手にとっては自分の技術で点を取る力が重要であるのに対し、アマチュアの選手にとってはミスによる失点をなるべく防ぐ力が重要になるというわけです。
要は、
プロのゲームとは「勝とうとするゲーム」であり、アマチュアのゲームとは「負けないようするゲーム」なのです。
これを投資に置き換えて考えてみますと、
機関投資家のようなプロの投資家が市場を上回るパフォーマンスを上げるのに躍起になっていることは置いておいて、一般的な個人投資家についてはそのようなゲームに参加するのではなく、いかにして自己の投資資金を防衛していくのかに意識を向けることが重要だという事になりますね。
個人的には、第一章はこのことを押さえておけばOKじゃないかと思いますね。
プロも「敗者のゲーム」に参加している
そうか、プロは「勝者のゲーム」に参加しているわけだから、個人投資家である私は「敗者のゲーム」に参加するようにすればいいんだね。プロなんかと同じ土俵で戦うなんて馬鹿みたいだもんな(笑)
って思いますよね?
しかし、
残念ながら資産運用の世界ではプロですらも「敗者のゲーム」に参加させられているようなのです。
その理由を本文を引用しつつ、いくつか見ていきましょう。
①機関投資家が市場
機関投資家がアクティブ運用をするにあたっては、市場に勝つことを目標にしていることが多いわけですが、そもそもその市場とは何によって形成されているのかといえば、機関投資家自体です。市場に勝つとは、いわば自分自身に勝つことと同義なわけです。
しかし、自分自身に勝つことは不可能なわけですから、自ずと利益を得られる機会は他人が失敗した時になるわけです。そしてそれ故、市場で繰り広げられている戦いとは、決して市場に勝つための「勝者のゲーム」ではなく、市場に参加している人たちの足の引っ張り合い、ミスの付け込みあい、「敗者のゲーム」なのです。
②構造的な問題
機関投資家の運用もまた「敗者のゲーム」になってしまっている理由には、市場との関係以外にも機関投資家自体の構造的な問題が指摘できます。
これは、『敗者のゲーム』ではなく、『賢明なる投資家』の内容を引用して説明していきます、そのほうが詳しく書いてあるので。
詳しくはコチラから
『賢明なる投資家』の中で、ファンド(ミューチュアルファンド)の構造的な特徴として指摘されているのは、以下の点です。
1. 平均的なファンドはリサーチや取引のコストを賄えるだけの株式を十分に組み込んではいない。
2. ファンドの費用がかさむにつれ、リターンは低くなる。
3. ファンドの株式を買い付ける回数が増えるにつれ、利益が減少する傾向にある。
”『新賢明なる投資家・上』P425 ”
ファンドは規模が大きくなるにつれて、リサーチや売買コストが増大していきます。そして、取引などのコストが増大していくにつれて、規模は拡大しているにもかかわらずリターンは減少していく傾向があることは様々な研究によって確認されているわけです。
『敗者のゲーム』の本文にも目を通しておきましょう。
そもそも、投資とはゼロ・サムゲーム以下の、全体としてはマイナスとなる「ネガティブ・サムゲーム」だという事を強調しておきたい。(P27)
以上より、
機関投資家にとって市場に勝つという事が意味しているのは、ネガティブ・ゼロサムゲームのなかで、自分自身に勝つという事なわけですから、大変難しい事であるのは明白といえましょう。
実際に、プロの資産運用成績は10年間では7割、20年間では8割が市場をアンダーパフォームしていることが知られています。
敗者のゲームを生き抜くためには?
では、
資産運用がアマチュア・プロに関わらず「敗者のゲーム」であることが分かったうえで、私たちはどのような戦略をとっていけばいいのでしょうか?
『敗者のゲーム』著者であるエリスさんが言う事はとてもシンプルです。
結局のところ、運用期間が市場に勝てないのであれば、市場を忠実に反映する、つまり市場に負けないインデックス・ファンドへの投資を考えてみるべきだ。(P26)
インデックス投資とは、市場に投資するようなものですから、市場に負けることはありませんし、取引コストが安いこともまた魅力です。
もちろん、
取引をする楽しさなんてものはないでしょうが、運用の成績においてはほとんどのポートフォリオマネージャーを負かしているわけですから、十分でしょう。
また、
他の有名投資書籍でも、インデックスファンドは優れた投資対象として進められています。例えば、『ウォール街のランダムウォーカ―』なんて聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録はこちらから!!
もちろん、
インデックスファンドについても注意する点はいくつかありますが、その点については本書の続きでも述べられていくと思われますので、今回はこの辺にしておきましょう。
ないとは思いますが、
この段階でインデックスファンドいいじゃん!!
投資しよう!!
とならないでくださいね(切実)
まとめ
・敗者のゲームとは如何にミスを減らすかのゲームである。
・資産運用はプロでさえも敗者のゲームをしている。
・市場に乗るインデックスファンドがおすすめ
ここまでお読みくださりありがとうございました。