『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑤第五章(ファンダメンタル価値の正体)
皆さんこんにちは。
この記事は、「ウォール街のランダムウォーカ―」第五章(ファンダメンタル価値の正体)についての備忘録になります。
備忘録①は以下よりどうぞ!
前章の、第四章までは約130ページにも及んでバブルについて学び。そこから株式投資に必要な教訓をいくつか得ることが出来ました。
第五章では、バブル景気の時に見られた砂上の楼閣理論ではなく、ファンダメンタル理論についてよく考察されています。
実際に見ていきましょう。
さて、
投資と投機の違いにの一つには、比較的現実的でかつ確実な期待に基づくかどうかがありました。
もちろん、
それも期待や予想の範疇を出るものではないのですが、比較的だとしても確実な予想を出すためには、株式投資について考える際、現在の株価水準が適正かどうか、それぞれの株式が割安か割高かを判断するための合理的な基準はどうしても必要になってくるわけです。
ではその基準とはどのような物なのでしょうか。
投資家には、たとえ非常に大まかなものではあっても、現在の株価水準が適正かどうかを判断するよりどころになる、理論的な尺度が必要である。果たしてそんなものがあるのだろうか。私はあると信じている。ただしそれは、ファンダメンタル価値だけに基づくものでもなければ、砂上の楼閣理論だけに基づくものでもない。(P139)
マルキールさんが言うには、株価の水準を判断するための基準はファンダメンタル理論にも、砂上の楼閣理論にも、完全に乗っかることはなく、両方の側面を含んでいるとのことなのですね。
では、
まずは、ファンダメンタル的な側面から見ていく事にしましょう。
四つの株価決定要因
マルキールさんは第五章において、主な四つの株価決定要因を示してくれています。
期待成長率
最初に述べられているのは、企業が将来にわたってどのような成長をしていくのかに関する期待、期待成長率です。
なぜ、
期待成長率は株価に影響を与えるのでしょうか。
マルキールさんは成長率の持つ大きな力を知る重要性を示しています。
投資の意思決定を行う上で、「複利」の意味することの重要性を十分理解しているひとは、ほとんどいないといってもいい。(P141)
成長率は一般的に百分率で計算され、「年平均~%の成長が見込める」のように使われます。そのため、実際に配当などの結果を計算する場合は複利計算によって求めますが、この複利の持つ力はとんでもないものです。
具体的に計算してみますと、
例えば、配当成長率が15%と25%の場合を比べてみますと、十年後には15%の場合配当額が約4倍になり、25%の場合は約9倍になります。
これについてさらに二十五年後を考えてみると、
15%の場合は約32倍に、25%の場合には約264倍になります。
この具体例から以下複利の重要な点が見えます。
・複利の違いは将来において大きな差になる。
・複利は増加量が指数関数的に増加していく。
そして
この二つのポイントを理由に、マルキールさんは以下のようルールを導くわけです。
株価評価の第一のルール:
合理的な投資家は、配当の成長率が高いほど、株式に対して高い価格を支払うはずである。
第一のルールの付則:
合理的な投資家は、成長率の期待持続時間が長いほど、株式に対して高い価格を支払うはずである。 (P144)
支払配当額
この二つ目の株価決定要因についても、投資に興味がある人はすんなりと感覚的に受け入れられる話ではないでしょうか。
株価評価の第二のルール:
合理的な投資家は、他の事情が等しければ、企業の利益のうち現金配当として支払われる割合が多ければ多いほど、高い株価をつけるはずである。(P147)
配当が高いなら株価は高い。
そりゃそうだ。
しかし、
このルールについてはもう少し注意してみておく必要があります。
まず一つ目に、
配当額は他の株価決定要因とも関係してくるという点です。
配当が高い銘柄を見つけた時、賢明な投資家であれば「ラッキー!!」なんて軽い気持ちで手を出すようなことはないはずです。「どうして高配当なのか」についてしっかりと考えるはずなのです。そして、考えた結果、「高配当にしないと資金が集まらないのでは?」「企業の成長余地が乏しいのでは?」など、様々な事に気づくでしょう。
あくまで、
他の事情が同じならという前提条件に気を付けることです。そして、胸に止めておくべきことは、市場においてすべての条件が等しい銘柄などは存在しないということです。
二つ目に注意すべき点は、
「現金配当」であるという点です。
どうして、株式配当や株式分割は狂喜すべきではないのでしょうか。
ポイントは、「ダメだ!!」と言っているわけではなくて、「喜ぶようなことではない!!」とマルキールさんが言っているということです。
例えば、株式が希薄化されることで流動性が上がったり、持ち分が増えることで現金配当が増えたりとか、
しかし、
基本的には株式配当後の一株の持ち分は、配当や分割の割合に応じて減ってしまうわけですから、別に喜ぶようなことでは無いわけです。
現金配当が増えるのかどうかが、あくまでも重要だという事を理解しておきましょう。
リスク
株価評価の第三の基本ルール:
合理的な(つまり、リスクは大きいよりは小さいほうがいいと考えるような)投資家は、他の事情が等しければ、その株式のリスクが低ければ低いほど、高い価格を支払うはずである。(P148)
当たり前っちゃ当たり前ですよね、しかしどうですか、皆さんは他の事情が等しければリスクが低いほど高い価格を支払いますか?
もちろん、
リスクは低いに越したことはないですよ、私も。
しかし、
ここで一つ個人的に気になったのは、もしより高い価格を支払ってしまった場合、それによって期待収益が変化してしまうという点です。
例え、リスクが低くとも投入する投資資金が多くなればそれだけ失うときの損失も大きくなるのですから。
もちろんとはいえ、
同じようなリターンが得られる場合にはリスクの低い方を選ぶことには変わりはありません。増しては、価格差が小さい場合は、マルキールさんの言う通り、リスク回避の方向に投資家が動くと考えてもよいでしょう。
あくまでリスク選好も一要因であり価格の正当性を大枠に捉えているに過ぎないという事を私は言いたいわけです。
金利水準
四つ目の株価決定要因は金利水準になります。
金利水準はどのように株式の価格に影響しているのでしょうか。
『ウォール街のランダムウォーカ―』では、80年代初めの債券市場を例に挙げていました。
80年代初頭、優良社債の利回りは15%にもなり株式から期待されるリターンを遥かにしのいでいました。
結果、
株式市場の資金が債券市場へと流れ込み、株式市場は急落したのでした。
これとは逆に、
金利が非常に低い時は株式の方がはるかにリターンが高いので、債券市場の資金が株式に流れてくるわけです。
『賢明なる投資家』などの有名な投資本で株式と債券で分散投資をする重要性について解説されているのは、株式市場と債券市場における上記のような資金流入の関係が一つの理由となっています。
株価評価に関する第四の基本ルール:
投資家が合理的であって、他の事情が等しければ、金利水準が低ければ低いほど、株価は高くなる。(P150)
株価決定要因における注意
ここまで、ファンダメンタルな株式の価値の決定要因について見てきましたが、これらの要因全体における注意点が三つ同書内で提示されています。
①未来の正しさを証明することは不可能:
完璧に予想が出来るなら、株式投資で損をする可能性はゼロに等しいはずです。しかし、現実問題そのような事はありえません。どのような方法を用いても、私たちが出来ることはせいぜい、正しいであろうことを合理的に予測することなのです。
②不完全なデータ:
銘柄を評価するにおいて、十分なデータとはどのようなものでしょうか。ましては、過去のデータをいくら調べたところでそれが未来に起こることの確実な根拠にはなり得ません。自己の判断は思うよりも軟弱な基盤の上に立っているのだという事を肝に銘じておくべきです。
③市場の評価はブレる:
ファンダメンタルな価値がどうであれ、市場が強気な時は株価が高めに評価され、弱気な時は低めに評価される傾向は否めません。ある銘柄が一期間において、適正な株価で取引されているからと言って長期的に正当な評価を受け続けるかはまた別の問題です。
まとめ
これまでに展開してきたファンダメンタル価値学派の議論を踏まえて言えることは、株価には一定の基準が存在するが、しかしその基準はきわめて柔軟性に富んだ、あてにならないものでもあるということだ。(P159)
マルキールさんは、ファンダメンタル理論に基づき、株価の価格形成にはここまでみてきた様々な要因が関係しており、それらはまた価格判断の基準になり得ると言っていますね。
しかし、
ファンダメンタルな基準だけでは説明できない部分も市場には多く存在しているし、ファンダメンタルな基準そのものもきわめて柔軟なもので、どのような株価でも正当化できてしまう可能性を持つとも言っています。
結局は、
砂上の楼閣理論にしろ、ファンダメンタル理論にしろ、適切な範囲で、適切な対象に、適切な時期に、適切に運用できるかどうかが最も重要な点だと私は考えます。
具体的にどのように運用していけばいいのかは、本書の2部、3部で触れられていくはずです。一緒に見ていきましょう。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
備忘録⑥はこちらから!!