『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑨第九章(新しいジョギングシューズ)
皆さんこんにちは。
この記事は『ウォール街のランダムウォーカ―』第九章(新しいランニングシューズ)の備忘録になります。
備忘録①は以下よりどうぞ!
『ウォール街のランダムウォーカ―』第九章では現代ポートフォリオ理論について説明がなされています。どのようにリスク低減を図っていけばいいのかについて良いヒントが得られるといいですね。
ちなみに、現代ポートフォリオ理論については過去に書いた記事があるので興味のある方は是非!!
ハイリスク=ハイリターン?
投資に興味がない人であっても、ハイリスク・ハイリターンの原則を常識として知っている人は多いことでしょう。実際に、投資の観点から言っても銀行の定期預金はローリスクではありますけれど、金利はかなり低くローリターンです。対して定期預金よりもハイリスクな株式は、より高いリターンを実現していますね。
しかし、
これはどのような場合においても成立するような原則なのでしょうか?
いいえ、違います。
むしろ、
リスクがある投資対象を分散投資に組み込むことで、リターン増加とリスク低減の両方を実現することが出来る場合もあるのです。
上の図を見てください。この図は横軸にリスク、縦軸にリターンをとったものになります。もちろん、この図からではボラティリティーが投資リターンの方向(正負)に直接相関するよう数学的な条件付けは出来ませんが、ボラティリティー上昇時に損失が発生しているということはわかります。
要は、
必ずしもリスクの大きさとリターンには正の相関があるとは言えないという事です。これがどういう意味か分からない方は単純にリスクが大きくなるからといって、リターンが増えるとは限らないと考えていただければ結構です。
それ故、
ハイリスク=ハイリターンという方程式は必ずしも成立するわけではなく、むしろリスクの低減とリターンの増加は一定程度両立が可能であるという事になるわけです。
では、
どのようにしてリスク低減とリターンの増加を考えていけばよいのでしょうか?
その答えの一つが『ウォール街のランダムウォーカ―』第九章で取り上げられている現代ポートフォリオ理論(MPT)と呼ばれているものです。
現代ポートフォリオ理論とは(MPT)
現代ポートフォリオ理論とは、債券や株式などの証券にどのように投資していけばいいのかを考えるための超基本理論です。MPTは経済学者のマーコウィッツによって提唱され、その業績から彼は1990年にノーベル経済学賞を受賞しています。
より詳しく現代ポートフォリオ理論とはどのようなものなのか、本文に沿う形で見ていきましょう。
現代ポートフォリオ理論は、私の妻と同様、すべての投資家はできるだけリスクを回避したがるものだと言う前提に立っている。(P287)
マルキールさんが言っているのは、いわゆる平均=分散アプローチの事ですね。
平均=分散アプローチとは、投資家は債券や株式の投資収益率(リターン)の期待値と分散(リスク)の二つの指標に基づいて意思決定をするという考え方で、具体的には以下の二つのルールに基づき意思決定をするものと考えられます。
難しい考え方ではありませんね。
分散投資によるリスク低減効果
投資家はリスクを回避する性質があるという前提に立つなかで、ポートフォリオを組み分散投資をするもっとも大きなメリットは、まさしくリスク低減にあります。
ではどうして分散投資をすることがリスク低減につながるのでしょうか?
それは、
ポートフォリオ内の各証券それぞれの期待リターンを分散投資による投資割合で加重平均した値とポートフォリオ全体の期待リターンは等しくなるが、ポートフォリオ全体の標準偏差は、ポートフォリオ内の各証券の標準偏差の加重平均以下になるからです。
ん?どゆこと?
となってしまった方、安心してください。
こういう数学的な計算は賢い学者やアナリストにお任せするとして、一般人の私たちはその結果をただ理解すればいいのですから。
具体例を出します。
あなたの目の前には、銘柄Aと銘柄Bという二つの株式が存在しています。この株式は期待リターンがどちらも20%で、リスクは50%です。つまり、2分の1の確率で20%のリターンがもらえるか、紙くずになるかということですね。
この時、
あなたが銘柄A、もしくは銘柄Bのどちらか一つに全資金100万円を投入したとしたら、あなたは100万円を50%の確率で失うことになります。
しかし、
仮に、銘柄Aと銘柄Bに50万円ずつ分散して投資した場合、あなたが100万円を失う可能性は、銘柄Aと銘柄Bの両方のリスクが実現した時であるので、25%となります。
そして、
この時一番重要な点というのは、100万円失う確率が下がっているのにも関わらず期待利益は全く変化がないという事です。
集中投資の場合:0.5*0+0.5*20=10
分散投資の場合:0.25*0+0.25*20+0.5*10=0+5+5=10
つまり、
上の小難しい説明で言っていたことは、
分散投資には期待リターンを変えずにリスク低減を達成する力がある。
という事です。
本文中の言葉も見てみます。
個別の会社の業績が全く同じように動かない限り、分散投資は常にリスクの低下をもたらす。~中略~実際にはこの例のようなきれいな形ですべてのリスクを除去することはできない。それでも、すべての企業の業績が常に完全に同じ方向に動くわけではないから、株式のポートフォリオを組んで分散投資をすれば、一つや二つの証券に投資するよりもリスクは小さくなるだろう。(P290)
適正な分散比率とは?
言い換えれば、分散投資がもはやリスクを減らす魔法の杖とはならない境界点があるのだろうか。多くの研究が示すところでは、答えは圧倒的に「イエス」である。(P292)
分散投資にはリスク低減の効果があることはわかりましたが、それでは見境なく分散し続ければリスクは低減し続けるのでしょうか?
マルキールさんが指摘している通り、そうではありません。分散にも適正な分散の割合が存在しているというのが一般的な意見です。
画像引用元:CAPMの詳しい図解!ポートフォリオ理論で分散投資を勧める理由
上のグラフから見てもわかる通り、A資産だけに投資した地点からB資産の割合が増加するにつれ、しばらくの間はリスクの低下とリターンの増加の両方が見られます。しかし、リスクが5%程度にまで低下したところで、リスクは再び上昇をし始めていることが分かります。
もちろん、
どの程度のリスクでどの程度のリターンを目指すのかは個人の裁量によるところではありますが、分散投資のリスク低減にも限界があるという事は頭にいれておくべきでしょう。
『ウォール街のランダムウォーカ―』本文中では、モルガンスタンレー証券のデータを用いて、アメリカ株とEAFEに含まれるアメリカ以外の先進国株式の分散投資について調査されていました。結果としては、EAFE株24%、アメリカ株76%の時が最もリスクが低くなり、以降EAFE株式の割合が増えるほどリスクは上昇していました。
これらのデータは古いものなので決してこの割合で投資しようなんて思わないでくださいね。ただ、国際分散投資の有効性を確認するにおいては十分な根拠となっているのではないでしょうか。
まとめ
『ウォール街のランダムウォーカ―』第九章では現代ポートフォリオ理論の大枠を見るような内容でした。どのようにこの理論を用いるべきかや、実際に組み入れる対象についての考察は後の章に渡されていましたね。ともあれ、現代ポートフォリオ理論はリターンとリスクの考え方に大きな影響を与えてきたことがよく理解できました。特に、分散投資のリスク低減には限界があるという点については忘れないようにしておきたいですね。
本日は以上です。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
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