『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑦第七章(テクニカル戦略は儲かるか)
皆さんこんにちは。
この記事は『ウォール街のランダムウォーカ―』第七章(テクニカル戦略は儲かるか)の備忘録になります。
備忘録①は以下よりどうぞ!
『ウォール街のランダムウォーカ―』第七章では、テクニカル分析の有効性について考察されています。
値動きはランダムだと主張するランダムウォーカ―理論とは全くの対極に位置すると言ってもいいテクニカル戦略、その有効性はいかほどなのでしょうか。
見ていきましょう。
マルキールさんの立場
まずは著者である、マルキールさんがテクニカル戦略についてどのような態度をとっているのか大枠を見ていきましょう。
詳細な調査によると、テクニカル信者には穴の開いた靴や衿(えり)の擦り切れたシャツを身にまとっている者が多いということが知られている。私個人の経験では、失敗したテクニカル信者の成れの果ては何人か知っているが、成功したテクニカル信者というものには、ついぞお目にかかったことがない。(P196)
テクニカル分析は、学者の世界では異端の教義であり、それを非難するのは私にとって喜びでさえある。私を、このような弱いものいじめに走らせる動機は、第一に、この手法が明らかに間違っていること、第二に、いじめやすいこと、である。(P198)
ボロクソに言っていますね(笑)
果たして当時の調査がすべて現在の市場にも当てはまるのかと言ったら、それは分からないのですが、それでも、過去の株価の動きが未来の株価の動きに影響するというテクニカル分析の考え方は、ランダムウォーク理論を提唱するマルキールさんにとって受け入れられない考え方であることはわかりました。
余談ですが、
『ウォール街のランダムウォーカ―』が出版された当時、当然テクニカル派の人々からも猛烈な反対があったみたいです。本も破かれたことがあるらしいですよ(笑)
では、
マルキールさんはどうしてテクニカル戦略は間違っていると主張するのでしょうか。ここからは、その主張の根拠についてみていきましょう。
株式市場にモメンタムはあるのか?
まずはじめにマルキールさんが主張していることは株式市場にモメンタムなどはないという事です。
モメンタムがどういうものなのかについては文中で簡潔にまとめられていたので引用させていただきましょう。
モメンタムとは、上昇し続けてきた銘柄は引き続き上昇を続けるし、下がり始めた銘柄はさらに下がると言う傾向のことを言う。(P199)
前章で、テクニカル分析には前提条件が二つあるという事を学びましたね。
詳しくはこちらから⇓
そして、
そのうちの一つは、株式相場には「トレンド」があるというものでした。
マルキールさんがモメンタムについて異議を申し立てているのは、このテクニカル分析における前提条件の一つ「株式市場にはトレンド(モメンタム)がある」を崩す意図があるわけです。
では、その根拠とは。
確かに、株価の上昇が数日にわたって連続することは時々見られる現象である。しかし、それは何も特別な現象ではない。たとえ裏表が等しい確率で出るコインを投げたとしても、表が何回も続くことはあるのだ。株価の上昇あるいは下降が連続して起きる頻度は、コイン投げで表や裏の連続が何の規則性もなく起こるのと変わらないと言える。(P200)
テクニカル理論では過去の株価の動きが将来にも影響を与えトレンドの形成につながると主張するわけですが、マルキールさんに言わせれば、「そんなトレンドはコイントスでも作れるわ、ぼけぇぇ!」ということなのでしょう。
もう少し詳しく見ていきます。
上の図は、マルキールさんが実際に行ったある実験の結果を表したものです。確かに、テクニカル理論派の人達が主張するように上昇が続く場面や、下降が続く場面を見て取ることが出来、トレンドが存在しているかのようにも見えます。
しかし、
実は、このチャートはコイントスをして結果が表の場合は価格を上昇させ、結果が裏であった場合には価格を下落させるというルールに基づいて作られた、いわば完全にランダムな相場のチャートなのです。
株価がどう動くのかはランダムであり予想できるものではないというマルキールさんの主張は正しいようにも思えますね。
テクニカル戦略は儲かるのか?
マルキールさんはテクニカル戦略をボロクソに言っているわけですが、もしそれが本当ならテクニカル戦略がここまで世の中に広く浸透しているのはどうしてなのでしょうか?
多くの人に浸透しているのは、実際にテクニカル戦略によってお金を儲けることが出来ているからではないのでしょうか?
また、
株式市場にはデイトレーダーと呼ばれる人たちもいますし、なんとなく儲かっているイメージはありますよね。
マルキールさんの主張を見てみましょう。
私は、テクニカル戦略が絶対に儲からないと言っているわけではない。実際、テクニカル戦略を用いたために損失を被ったと言う投資家は少ないはずだ。ポイントは、むしろこうだ。単なる「バイ・アンド・ホールド」戦略、つまり、ある銘柄ないしは銘柄群を買い、長期保有することが少なくともテクニカル戦略と同じくらい、ないしはそれ以上に儲かるものだということである。(P204)
マルキールさんはテクニカル戦略でも利益が上げられる可能性は認めていますね。ただし、その利益はもっと単純かつ安全な「バイ・ホールド戦略」よりも高いものであるとはいえず、より効果的な戦略とは言えないと言うわけですね。
そういえば、
あの有名な経済学者ケインズによる投資のアドバイスとして「もっとワインを飲め」というものがありましたね。お金とは目的ではなく何かをするための手段。自分が何のために投資をするのかをきちんと考えて安定的なポートフォリオを組んだなら、一年に数回のリバランスぐらいにして、自分の人生をきちんと生きなさいとの事でした。
そのため、
テクニカル手法が優れた方法だと主張するには、バイ・ホールド戦略と同じだけの利益を上げられるだけではいけないのですね。むしろ、他の要素で負けている分テクニカル戦略にはそれを上回るパフォーマンスを期待しなくてはいけないわけです。
しかし、
このパフォーマンス面に関してもマルキールさんは
テクニカル戦略でバイ・ホールド戦略のパフォーマンスを超えるのは難しいです。
と一蹴してるわけです。
まあ、この辺はかなり激しい論争があるようなので深くはつっこみませんが、マルキールさんは、有名どころのテクニカル理論(ダウ理論・相対強度法など)に関しては全て検証してこの結論を出しているという事は書いておきましょう。
投資家としてどのようにすべきか
では、この『ウォール街のランダムウォーカ―』第七章から私たちはどのような投資のヒントを得ることが出来るのでしょうか。
もちろん、
テクニカル分析をかなり信用して取引していらっしゃるかたもいるとは思いますし、それを否定するつもりは毛頭ないのですが、私個人の意見としてはバイ・ホールド戦略をとるほうが安全な投資方法だと感じますね。
というのも、一つ目にやはり、手数料の問題があります。
テクニカル分析をする場合はバイ・ホールド戦略に比べて圧倒的に取引回数多い傾向があります。取引コストは、確定的な損失です。不確実性の多い投資において、取引コストという確実な損失をどれだけ抑えられるのかは最も重要な課題です。テクニカル分析では市場の様々な相関を根拠にしますが、そのような相関から得られる利益のほとんどは取引コストによって相殺されてしまう事が研究で明らかになっています。テクニカル分析によってバイ・ホールド戦略よりもかなり高いパフォーマンスが上げられる確実な根拠がない限り、バイ・ホールド戦略が合理的だと感じます。
二つ目の理由としては、テクニカル戦略はタイミングに重きを置くことになるからです。『賢明なる投資家』などの他の投資書籍でも語られていますが、タイミングで取引をするのは投機になる可能性が高いですし、実質的な価値によるクッションがない場合には予想を外した時の損失も大きくなってしまうでしょう。
確信なきテクニカル戦略は死
が私のモットーです
まとめ
※マルキールさん曰く
・トレンドなんてない
・パフォーマンス大したことない
・手数料高い
・バイ・ホールド戦略でええやん
ここまでお読みくださりありがとうございました。
備忘録⑧はこちらから!!