『新賢明なる投資家』備忘録⑬第12章(一株当たり利益に関して)
みなさんこんにちは!
この記事は、『新賢明なる投資家』第12章(一株当たり利益に関して)の備忘録になります。
備忘録①は以下よりどうぞ!
株式に対する投資判断をする際には、多くの投資家が企業の年間収益に注目するものです。一年間の収益がとても良い企業の株価は上昇する傾向がありますし、収益が芳しくない企業の株価は下落する傾向があります。
これは、
投資家が企業の年間収益に対して関心があり、その期待が価格に反映されているものとみることが出来ます。
しかし、
この年間収益のような短期的な数字を考えるにあたっては注意が必要であるとグレアムさんは12章で述べています。
会計の錯覚
グレアムさんは本文中で賢明なる投資家に向けて二つのアドバイスをしています。
第一のアドバイスとは、年間収益を気にしすぎるなということだ。第二は、もしも短期的な数字を気にするのならば、一株当たり利益に隠れた落とし穴に警戒しろという事である。(P53)
本文で繰り返し述べられているように、長期投資を旨とし、企業の実質的価値を重視する賢明なる投資家にとっては、短期的な過去のデータを深く考えることに正味あまり意味はないことでもある。そしてそれ故、グレアムさんも年間収益のような短期的な過去のデータについてあまり気にし過ぎるなと言うわけです。
しかし、
やはり人間は短期的な成果から長期的な成果を予想してしまうという心理的性向を持っているわけで、短期的な情報を投資の判断に入れ込まないというのも難しいのです。
グレアムさんは、そのへんもきちんと理解してくれています。
そして、その為に二つ目のアドバイスがあるのでしょう。
では、
一株当たり利益に隠れた落とし穴とは一体何の事を言っているのでしょうか。
会計錯覚
これに尽きます。
企業は、毎年その年の経済活動に関する年次報告書を出しています。これは企業の財務状況を把握したり、収益の様子をチェックするためにかなり重要な資料となります。
しかし、
ここで気を付けなくてはいけないのは、企業会計には発表者側の裁量に委ねられている要素も多く、利益に対する解釈に差異が見られることもあるのです。
つまり、
その報告書に記載されている数字が実際の企業の様子を正しく反映できているのかは、企業次第のところがあるのです。
本文中の例を一つ引用させていただきます。
1999年度次報告書のつまらない脚注によると、グローバル・クロッシングは翌年、「請負契約勘定」という科目を新たに設けた。さすがに大半の建設コストを自社のネットワークを使った販売施設から得ている直接利益の諸掛りには計上できなくなったのだろう。その代わりそうした建設コストの大部分は営業経費としてではなく、設備投資として処理されるようになったのだ—それによって同社の純利益は減少するどころか、資産総額が増加したのだった (P81)
このように、
企業の提供する情報が本当に正しく企業の実態を反映できていない可能性が存在している以上、投資家は短期的なデータについても、特に会計という一見それらしい数字に囲まれている資料については特段の注意をもっていなければならないという事が認識できると思います。
投資家への警告
では、具体的な話として企業の年次報告書を見る時にはどのような事に注意すればよいのでしょうか。
『新・賢明なる投資家』では、三つの基本方針を示してくれています。
一つ目は、後ろから読むというものになります。
年次報告書に限らず、保険などの契約書、同意書を最後まできちんと読んだことがある人はほとんどいないのではないでしょうか。
仮に企業が、何か隠したい事や細工を施したいという意図を持っている場合、それは目立たない報告書の後半に書いてある可能性が高いのです。
それ故、
あなたが年次報告書を調べるにあたっては、後ろから読み進めることで違和感に気づくことが出来る可能性が高くなります。
二つ目は、注釈を読むことです。
先程、会計にはある程度企業側の裁量が効くと書きましたが、完全なる嘘を報告書に記載するのは、事業の存続を目指す企業側の思惑とは対極にあるものです。
その為、ほとんどの場合には一般の人が良く理解できないような形で書いておくのです。
そしてその点について調べる手がかりになるのが脚注なのです。
特に、「会計方針の概要」のような注釈部分は、企業が収益・売上高・資産・コストといった事柄をどのように処理しているのかを表しています。
分かりにくく、退屈な文字が延々と続いている事とは思いますが、我慢して理解していく事が大事です。
グレアムさんは、投資成績は投資家の知的努力によると言っています。
あなたが、この工程を我慢して行うことが出来れば、リスクの高い株式を購入してしまうのを避けることが出来るようになり、延いてはあなたの投資成績を格段に安定したものにしてくれることでしょう。
最後に、深く読むこと
狡猾な財務報告書からあなたの身を守るには、あなたもまた賢くならなくてはいけません。難解で意味の分からない単語の並んでいる報告書を正しく読むためには、相応の知識が要請されるのです。
投資の勉強の一環として企業会計についても学んでみましょう。
もちろん、
あなたを欺こうとする会計を作成する人たちはあなたよりも、会計の知識を持っている可能性が高いです。
しかし、
過去にどのような例があったのか、そしてその例に類似するケースを自分で見つけられるようになるためには、必ずしも作成者に会計の知識で勝つ必要はありません。
あなたの努力が、あなたの投資リスクを下げる。
これだけは間違いのないことです。
まとめ
基本的に短期的な収益などは気にしない
気にするのであれば、会計の罠に注意
・裏から読む
・注釈を読む
・深く読む
ここまでお読みくださりありがとうございました。
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