『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑪第十一章(効率的市場理論に対する攻撃はなぜ的外れなのか)

みなさんこんにちは。

 

この記事は『ウォール街のランダムウォーカ―』第十一章(効率的市場理論に対する攻撃はなぜ的外れなのか)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ。

jeconomy.hatenablog.com

 

前章、第十章では資本資産評価モデルから投資家がとるべくリスクの考え方について学びましたね。

 

今章、第十一章では効率的市場理論に対する様々な反論を検証していく内容となっています。

 

どのような投資に関するヒントが得られるのか一緒に見ていきましょう。

 

効率的市場理論とは

まずは、効率的市場理論とはどのような理論なのかについて見ておきましょう。

 

効率的市場理論(効率的市場仮説)とは、株式市場では利用可能なすべての新たな情報が株価に直ちに織り込まれるため、投資家はベンチマークや市場平均を超すリターンを得ることはできず、株価の予測は不可能であるという学説になります。Efficient-market hypothesis の訳語であることからも、いまだ科学的に証明されたものではなく仮説の域を出るものではありません。

 

しかし、

ランダムウォーク理論を確立するうえで一つの重要な柱となっている理論になっています。そしてそれ故、『ウォール街のランダムウォーカ―』著者のマルキールさんはこの理論に対する反論を第十一章において取り扱っているわけです。

 

効率的市場理論に関する本文中の言及にも目を通しておきましょう。

 

ファイナンスの教授と学生が交わす有名なジョークから始めよう。お札をみつけた学生が立ち止まって拾おうとすると、教授はそれをたしなめて、「よしたまえ、もしそれが本物のお札なら、いままで放置されているはずがないだろう」と言ったというものだ。このジョークは、金融経済学者が通常「市場は効率的だ」というときのニュアンスを実によく伝えている。(P328)

 

市場においても、道の上にお札が落ちているように利益を上げられる可能性が高い場面は訪れることがあります。

 

しかし、

効率的な市場ではそのような場面が到来するや否や市場の参加者によってすぐさま修正されてしまうのです。上のジョークが言うように効率的な市場においては転がってきたチャンスはすぐさま誰かに拾われてしまうわけです。どこの道にお金が落ちているかなど誰が予想できるのでしょうか。

 

しかし、100ドル札は転がっていないとしても、より少額の紙幣やコインなら転がっているかもしれない。そう考える人は多い。そしてどれだけの小銭が転がっているのか、それを効果的に見つけ出す方法はあるのかどうか、それを研究することが多くの学者の飯のタネになったのである。(P329)

 

なるほど、

確かにお札が落ちていることなんてめったにありませんが、小銭が落ちている場所ならば自販機の下とか見当がつきそうな気もします。

 

効率的市場理論に対する反論に対して

確かに、小銭探しくらいなら効果的な予想法はありそうですし、実際に市場が効率的とは言えない場面もありそうな気がします。というか、そもそも完璧な効率性が達成されることなんて株式市場じゃなくても見たことがありません。

 

とするならば、

市場は効率的では無く予想可能だと考えるべきとも思えますよね。それでも、マルキールさんは市場は効率的で予想できないというわけですから、そこには何かしら理由があるはずです。

 

見ていきましょう。

 

 効率的市場仮説に対する反対の流れは行動ファイナンス理論の登場による影響が大きいと言えます。

 

オランダのチューリップバブル、イギリスの南海会社バブル、アメリカのブラックマンデーなど、市場では度々非効率で不合理な変動が繰り返されてきました。

 

こうした価格変動を効率的市場理論の観点だけで説明するのはどうしてもできないわけなので、こうした価格変動を説明するための新しい理論の必要性が高まってきました。

 

このような流れのなかで現れてきたのが、株式市場における価格決定プロセスに価格変動の癖やパターンという心理的な要因を持ち込んだ行動ファイナンスという新しい学問分野なのです。

 

そして、

行動ファイナンス派の学者らは、市場において投資家の判断には市場への過剰反応や楽観、悲観、ムード、流行などの人間の心理的性質が強く関わっており、それ故、市場ではしばしば予測可能なパターンを観測することが出来ると主張するようになっていったのです。

 

行動ファイナンス学派の偉業は、予測可能な株価変動のパターンもあることを裏付ける、多くの統計的な研究によって支えられてきた。実際、この分野の学問の世界における新しい呪文は、「株価は少なくとも部分的には予測可能である」というものだ。(P327)

 

それでは、行動ファイナンス派の人たちに向けてマルキールさんはどのような意見を持っているのでしょうか。

 

私の結論はこうだ。これらの効率的市場理論に対する反証はいずれも誇張されており、株式市場が投資に役立つほどに予想可能だという主張もあてにならないものだ。そしていろいろ検討した結果、やはり効率的市場理論の教えに従って、市場を広く代表するようなインデックス・ファンドに投資するのが一番よいことを、あらためて示すことにしたい。(P327)

 

マルキールさんは行動ファイナンス派の人たちが示した効率的市場理論に対する反証は誇張されているし、実際に使えるような予測可能性もありませんという立場なわけですね。

 

まあ、ランダムウォーク理論とは逆の立場ですもんね。

 

 

マルキールさんの主張

どうして行動ファイナンス派の反証が誇張であるのか、どうして投資に使えるほどの予測可能性が市場にはないのかという点については本文中で様々な検討がなされています。

 

例えば、

市場平均を上回るとされる10個以上の投資戦略についてその戦略の有効性を検討したり、プロのファンドの成績を調査したりなど。

 

どのような内容であったかは、かなり長くなってしまうので割愛させていただきますが、興味のある方はぜひとも本書を手に取ってみてください。

 

ともあれ、

マルキールさんは行動ファイナンス派の予想可能性に対する主な反論理由は以下のようになります。

 

①長期的な持続性に対する疑問:

  ”報告された予測可能な市場パターンの多くは、ありとあらゆる方法でデータをいじくり回した結果にすぎないのかもしれない。これらの結果が将来も続くかどうかはきわめて疑わしい”(P362)

 

 

②一般投資家の利用可能性:

 ”例えば、一月効果を利用とするとすると、それに要する売買手数料が無視できないほど大きいため、経済的には意味がなくなってしまう。”(P362)

 

 

③見せかけの価格変動:

 配当利回り効果などの予測可能なパターンは、一般的な金利の変動を反映しただけのことかもしれないし、小型株効果の場合は、それに見合ったリスクが反映されているだけかもしれない”(P362)

 

 

④自壊する可能性:

 ”これらのパターンが真のアノマリーだとしても、リターン最大化を目指して投資家がそれを利用しようと押し掛けた途端に、自壊してしまう可能性が高い。”(P363)

 

 

 コンピューターの発展によって計算能力が大幅に向上した結果、市場の値動きに対して数多くのパターンとも思える値動きを観測することが出来るようになりました。しかし、膨大なデータを検索すれば偶々であってもパターンのように似た価格変動が観測される可能性は高いはずですよね。過去においてパターンのように見えたものも、かなり脆弱な基盤の上に立っている可能性は大いにあるため、将来の予測に活かせるものなのかは疑問に残りますね。

 

他の理由についてもおおむね理解できそうです。特に、有名な理論が自壊していくというのは色々な所でも述べられていますね。

 

 

まとめ

マルキールさんは、市場が効率的ではない動きをすることはあるものの、行動ファイナンスでは信頼に足るような予測可能性は得られないし、それが効率的な市場の反証にはならないと言っているわけですね。

 

確かに、私もおおむねこの意見には賛成です。私自身、行動ファイナンスの観点から価格を説明しやすい状況が存在していることは認められると思います。

 

しかし、

それを投資に活かすかとなったらかなり悩むところです。なぜなら、もし私がそのようなパターンに出くわしたとしたら、

 

「どうしてこのお札はまだ道に落ちているのだろう?」

 

と思うからです。

 

もちろん、ほんとうにただ落ちているだけの可能性もあるでしょう。しかし、同じようにそのお札には何かしら裏がある可能性もあるわけです。

 

この先の態度は投資家の皆さんの性質によるところが大きいでしょう。

 

私は防衛的な投資家を目指している、だからこそお札は拾わずに市場の波に乗るインデックスファンドを投資戦略の核とするべきだと思うだけのことです。船に乗るならば、海流に乗ることが最良の航路だと思うだけです。

 

皆さんはどうでしょうか。

 

 

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

 

備忘録⑫はこちらから!!

jeconomy.hatenablog.com