『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑫第十二章(インフレと金融資産のリターン)

みなさんこんにちは

 

この記事は『ウォール街のランダムウォーカ―』第十二章(インフレと錦秋資産のリターン)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

jeconomy.hatenablog.com

 

前章、第十一章では効率的市場仮設とはどのような物なのか、またそれの反対に対するマルキールさんの意見について学びました。

 

今章、第十二章ではインフレと金融資産のリターンがテーマとなっています。どのような投資におけるヒントを学ぶ事ができるのか楽しみですね。

 

株式リターンの構成要素について

ウォール街のランダムウォーカ―』第十二章ではまず初めに、株式や債券におけるリターンとはどのようなものなのかについて触れられています。

 

株式のほうから見ていきましょう。

 

非常に長い期間で見た時の株式投資の平均リターンは、二つの基本要因からもたらされる。それは配当利回りと今後の一株当たり利益、配当の成長率である。(P368)

 

株式を利用して利益を上げるには、主に価格変動によって発生する売買差益を利用するキャピタルゲインと配当や利子など経常的に発生する利益であるインカムゲインがあります。

 

今回、取り上げられているリターンとは後者のインカムゲインを指していますね。配当の利回り+配当の期待成長率が長期的な株式投資のリターンであるという事です。特に難しいことはありません。

 

ポイントとしては、長期投資におけるリターンであるという部分ではないでしょうか。

 

短期的なリターンは市場水準に影響を受ける可能性が高いからです。金利水準変化や市場のムードによって年平均リターンはかなりブレますからね。

 

配当の重要性は?

株式の長期リターンにおいて配当の持つ重要性は大きいものです。

 

しかし、

少し歴史を振り返ってみれば、配当に対する重要性に疑問の声が投げかけられたこともあるのは確かでなわけです。

 

本文中の言及を見てみましょう。

 

二〇〇〇年代に入ると、多くの専門家がもはや配当は過去ほど重要な要因ではなくなったのではないかと考え始めた。というのも、ますます多くの企業が伝統的な配当の形でなく、自社株買い戻しの形で利益を投資家に還元し始めたからだ。(P370)

 

確かに自社株を買い戻すことには様々なメリットが存在していますよね。下に主要なものをまとめておきます。

①発行済み株式の減少:

 企業が自社株を購入することによって、発行済み株式数が減ると、一株当たりの価値が高くなります。

 

②税金対策:

 株価の上昇による「含み益」に関しては株式の売却時まで税金を払う必要がない、つまり相続すれば課税されません。

 

ストックオプション行使:

 これは経営側のメリットですが、自社株の購入によって株価が上がればストックオプションの行使によって得られる利益も増えることになります。

 

④財務戦略:

 企業は買い取った自社株に対して配当金の支払い免れます。故に、買いつけた株数の分だけ配当金の支払い総額を減らすことができますので、余剰資金の再投資先がない場合などでは財務上有効な戦略になります。

 

 

しかし、

このような様々なメリットに対してマルキールさんは、配当金の重要性を否定できるような効果は期待できないと言っています。

 

株主が非課税の機関投資家であったり、年金機関や個人退職勘定で株式を保有する個人投資家の場合には、配当は課税されないからだ。(P371)

 

一つ目の指摘は、投資家への税金面でのメリットに対してです。株式の保有に気を付けさえすれば配当を貰っても税金対策はできる!!、ということですね。

 

自社株買い戻しは、ストックオプションが行使される時に、交付しなければならない株式を手当てするために行われることが多いのだ。(P374)

 

ストックオプションが行使された場合、企業は行使した人にあげる株式を調達しなければなりません。その場合、一般的に市場から株式を調達するのではなく新株を発行することで調達する場合が多いです。

 

しかし、

そうすると、株式の発行数が増えるために一株当たりの価値は低下してしまいます。

 

上の引用部で言っていることは、ストックオプションの行使による株式の希薄化への対応として自社株買い戻しは利用されることが多いということです。

 

まとめるとこうなります。

 

ストックオプションを行使する

→株式を新規発行する

→発行済み株式数が増える

→株式が希薄化する

→自社株買い戻しをする

→一株当たりの価値が高まる

→元に戻る

 

 財務戦略としてのメリットは投資家への還元とは言えないわけですから配当の重要性に何ら影響はありません。

 

以上より、マルキールさんは自社株買い戻しが良く用いられるようになったとしても配当の重要性が損なわれるようなことにはならないし、むしろ株価が低迷した場合などは配当の重要性は高まると主張しています。

 

債券リターンの構成要素について

 それでは続いて債券リターンについて見ていきましょう。

 

債券投資の長期的リターンをはじくのは、株式よりは簡単である。債権の保有から長期的に得られるリターンは、購入時に計算される「複利最終利回り」で近似される。(P372)

 

そのとおりですね。

 

もちろんこれは債権を満期まで保有した場合の話です。債券は比較的安全な投資対象でありますので、購入時における複利最終利回りを債券投資から得られるリターンの予想値として採用することは合理的な判断だと言えますね。

 

では、債券を満期まで保有しない場合はどのように考えていけば良いのでしょうか。

 

特に考慮しなくてはいけないポイントは以下の二点でしょう。

金利変動: 

 債券価格は金利変動の影響を大きく受けます。一般的には金利が上がると債券価格は下落し、金利が下がると債券価格は上昇します。理由は、例えば金利が上がった場合は、新規発行債券の方が利上げ前の債券に比べて利回りが高くなります、そこで利上げ前の債券を売買するためには債券価格を引き下げて、新規発行債券の利回りと同水準に持っていく必要が出てくるからです。利下げの場合はその逆を考えていただければ理解できるでしょう。

 

②インフレ:

 債権はインフレの影響を強く受けることになります。満期まで定期的な利子の額が確定している債権の場合、インフレによって物価が上昇していく=購買力が低下していくなかでは実質的なリターンは目減りしてしまいます。例えば、実質リターン5%を実現したいとしてもインフレ率が2%ならば、名目上リターンは7%上げなくてはいけないわけです。また、インフレ率がある一定のレベルを超えると、消費者の支出を抑えようとする中央銀行の政策によって、金利は上昇する傾向があります。その結果、債券価格は低下し、投資の全体的なリターンも減少します。

 

 

マルキールさんの提言

マルキールさんは、ここまでみてきた株式や債券に関するリターンを踏まえて、1946年~2000年にかけての時代を三区分に分けて調査するとともに、二一世紀に関する大まかなリターンの予想値を語っていました。

 

三つの年代に関する調査結果は実際に手に取って読者の皆さんにぜひ読んでいただきたく思います。

 

二一世紀の予想に関しては、優良社債を満期まで保有した場合には6.5%~7%のリターン、株式のリターンではS&P500ベースの株式投資で年平均8.5%前後と言っていました。

 

もちろん、マルキールさんがランダムウォーク理論派の当事者ということからも、この予想値が将来を確約するものではないことは明白ですが、何一つとして道しるべを持たずに投資をすることもできないわけですので、妥当と言えるくらいの控えめなリターン予想は立てておかなくてはいけないのでしょうね。

 

実際に見てみると、S&P500のリターンは過去10年で6.98%、過去20年で7.94%(※2016年データ)となっていましたね。2008年にリーマンショックがあったことを加味すれば、マルキールさんの予想値も妥当なところだったのではないでしょうか。

 

少なくとも、投資を考えるうえでの予想リターンとしては活用できそうです。

 

まとめ

・配当は今でも重要

 

・債権は金利変動とインフレに注意

 

・予想値は控えめに、株式は一桁台後半、債券は5%程で考えるのが防衛的

 

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

備忘録⑬はこちらから!!

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