『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑥第六章(株価分析の二つの手法)
皆さんこんにちは。
この記事は、『ウォール街のランダムウォーカ―』第六章(株価分析の二つの手法)の備忘録になります。
備忘録①は以下よりどうぞ!
第六章においては、主な二つの株価分析手法について考察されています。それぞれどのような特徴があり、また一般投資家はどのような戦略をとっていけばいいのでしょうか。
実際に見ていきましょう。
テクニカル分析とファンダメンタル分析
株式市場では長い間、ありとあらゆる方法で将来の株価を予想しようとする試みが繰り返されてきました。そのなかでも、多くの人達が利用している株価分析アプローチには主に二種類、テクニカル分析とファンダメンタル分析があります。
それぞれどのような分析手法なのでしょうか?
テクニカル分析
テクニカル分析は、変動する価格や需給、投資家の行動パターンに注目して株価の分析を試みる手法です。この手法を用いる場合は、企業のビジネスや経営状況よりも、売買のタイミングが重視される傾向があります。
テクニカル分析が何かを一口で語るとすれば、株価チャートをつくり解釈することだと言えるだろう。(P168)
上の画像のように過去の取引を表したチャートを分析することにによって、将来の相場動向を探る手掛かりを得ようとするのはテクニカル分析の最たる例ですね。
また、
テクニカル分析は二つの重要な前提に立脚しています。
①チャートはファンダメンタルな情報を織り込んでいる:
過去の株価の動きには、既に企業の財務状況や利益、配当に関する情報は反映されているという考えですね。
②相場にはトレンドがある:
相場には、株価の上昇が持続する上昇相場や、株価の動きが停滞するレンジ相場、株価の下落が持続する下降相場の三つがあるとされています。
『ウォール街のランダムウォーカ―』第六章でマルキールさんはテクニカル分析の問題点について触れています。
もっとも、私としてはチャート分析を弁解するよりも、理異論上の問題点を指摘するほうがよっぽど簡単である。(P178)
一点目、
”チャーティストはトレンドが形成された後にしか投資することはないし、またそのトレンドが崩れた後でしか売りに出ないという事だ。”(P178)
チャートとは過去の取引の集積です。あなたが上昇トレンドの形成をチャートから確認したとしても、あなたが見つけたそのトレンドの形成は他の人の取引によるものなのです。要はその段階ではすでに株価が高い可能性があるのです。
二点目、
”この手の手法は、結局のところ自己矛盾に陥るものだということである。”(P158)
この意見はベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』の中でも触れられていましたが、要は一旦一つの手法が市場に浸透してしまうと、それによって利益を上げることが難しくなってしまうわけです。
みんなが同じ買いシグナルで買いを行うのであれば、それは早押しクイズのテレビ番組のように誰が一番早くボタンを押せるかの勝負になってしまいます。
しかし、
それならできるだけ早い段階でシグナルを見つければいいのではないかという意見もあるかと思いますが、なるだけ早く見つけようとした場合は確実性が下がりますので、それでは元も子もないわけです。
ファンダメンタル分析
ファンダメンタル分析は、企業の売り上げ高や利益、財務状況などの情報をもとに株式の本質的な価値を分析する手法になります。テクニカル分析が市場の群集心理に大きく影響を受けるのに対し、株式の本質的な価値を重視するファンダメンタル分析は、市場の心理ではなく、現在の株価である時価と本質的価値の差に注目するものです。
証券のファンダメンタル価値を推定する際に最も重要な作業は、その企業の将来における利益や配当を予想することである。(P181)
ファンダメンタル理論に関しては、第一部で取り扱ってもいるので説明はこの編で割愛させて頂きます。
もちろん、
同書内ではテクニカル分析の時と同様に、ファンダメンタル分析の問題点についても指摘がなされています。
一つ目、
”情報や分析が必ずしも正しいとは限らない”(P186)
ファンダメンタル分析では企業に関する様々な情報を駆使して分析していくことになります。
しかし、
どのような情報を、どのくらいの量で、どのように分析するのかは、分析する人の裁量に委ねられているのです。そして結局、その分析の正しさは結果論で判断するしかありません。なぜならたとえ過去に利益をもたらした情報であったとしても、将来において同じように適用できるかは分からないですし、反対に過去失敗した分析が将来において有効でないとすることもできないからです。
加えて、
同書内では情報そのものが誤って伝えられる可能性についても触れられています。
二つ目、
”価値の推定を間違う可能性が指摘できる”(P186)
例えば、
株価の割高・割安を判断する基準の一つには株価収益率がありますが、仮にその値が分析の結果25倍だったとして、それは割高なのでしょうか、それとも割安なのでしょうか。
これは本当に難しいところです、
日本の一部上場企業の平均は約15倍とも言われていますから、それよりは割高なのではないかとも考えられます。
しかし、
IT系の企業の場合は株価収益率は高めに出る傾向がありますので、一概に割高とは言えない面もあります。
つまり、
結局は分析する人が他にどのような要因を考えるのかによって株式の価値はブレるものであるわけですから、価値の評価に関しては、たとえ優秀なアナリストであろうとも間違う可能性があるわけです。
三つ目、
”そして最後の問題点は、たとえ情報とそれに基づく推定結果のいずれもが正しかったとしてもなお、あなたの買った株の値段は下がるかもしれないということである”(P187)
仮に貴方がポーカーでポケットエース(A二枚)を持っていたとしても、勝てる可能性は85%ほどであり、絶対に勝てるわけではありません。
貴方の分析結果はあくまでも予想の範疇を超えるものではないわけです。
また、
市場の参加者はあなただけではありません。ポケットエースは最強の手札ではありますが、テーブルに参加する人が増えるにつれて手札の勝率は減少します。例えば、9人テーブルの場合、勝率は31%しかないのです。
結局のところ、
市場があなたの分析結果にどのような結果を出すのかは、他の人たちの手札やテーブルの状況によるわけです。
成功するための三つのルール
テクニカル分析にもファンダメンタル分析にもそれぞれ問題点が存在していることをここまで見てきたわけですが、第六章の最後において著者のマルキールさんは、それら問題を踏まえたうえでどのように株価を判断していくべきなのか、以下三つのルールを示してくれました。
①今後五年以上の利益成長率が市場平均以上の銘柄を買うこと
②株価がファンダメンタル価値以上になっている銘柄には手を出すな
③投資家が「砂上の楼閣」を作れるようなストーリーが描ける銘柄を探そう
ここまでの内容が簡潔にまとめられていますね。
もちろん、
これを投資に活かすためにはもう少し考える必要がありますが、ともあれ『ウォール街のランダムウォーカ―』を読み返すにあたっては、この三つのルールがどうして重要なのか説明できるように読み返すことで効率的に復習が出来そうです。
第六章はこの辺で終わります。
まとめ
・ファンダメンタル分析、テクニカル分析にはどちらも問題点がある。
・三つのルールで問題点をヘッジしよう。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
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