『新・賢明なる投資家』備忘録⑥第五章(防衛的投資家の為の株式選択)

この記事では『新・賢明なる投資家』第五章の(防衛的投資家の為の株式選択)の内容について、まとめていきたいと思います。

 

備忘録①はコチラより↓

jeconomy.hatenablog.com

 

普通株式の長所

第五章では、冒頭、普通株式ポートフォリオに組み込むことの長所について書いています。

 

普通株式ポートフォリオに組み込むことの利点

 

 ・債券にはインフレによる資金価値の目減りから投資家を守ると言う効果が全く期待できないのに対し、株式にはその効果が相当程度まで期待できる。

・他の対象に投資するよりも、相対的に高い収益を得られる。(P208) 

 

 これはグレアムさんによって『賢明なる投資家』の初版が書かれた1949年についての言及であるわけで、今日の投資にそのまま当てはめることが出来るものではないです。

 

しかし、株の平均配当が優良債権を上回っており、かつ株式市場が堅調に上昇している場合においては、信ぴょう性の高い言及となるでしょう。

 

もちろん、株式を保有する利点があるとはいえ、自己のポートフォリオを100%株式で保有するようなことはしてはいけません。

 

株式と債券の関係は以下の記事で↓

jeconomy.hatenablog.com

 

どのような株を組み入れるべきか?

『新・賢明なる投資家』第5章では、株式を選択する上での4つの基準を提示しています。

 

・十分な、しかし過度にならない程度の分散投資を行うこと。例えば10銘柄以上30銘柄以下

・財務内容の良い有名な大企業を選ぶ事

・長期にわたる継続的な配当金支払いの実績がある事

・ある銘柄を買い付けるに際しては、過去7年程度の平均企業収益に照らして支払うべき価格の上限を決めること (P210)

 

しかし、ここで問題となるのは、このような基準で株を選択した場合、あなたは殆どの株式を投資対象から除外しなくてはいけなくなってしまうことです。

 

特に、投機家にも人気な成長株は、実質的にすべて除外しなくてはいけなくなるででしょう。

 

成長株の危険性について

成長株とは、一株当たりの利益が一般の株式に比べて高い割合で増加してきており、今後もその状況が続くと考えられている株式の事を指します。

 

高い成長率が今後も続くとなれば、非常に魅力的な投資対象に思えますし保有してもよさそうに見えます。

 

ではなぜ魅力的に思える成長株は上で述べた基準によって除外されてしまうのでしょうか?

 

その答えは、成長株の価格にあります。

 

成長株が魅力的な投資対象に思えるのは何もあなただけではないのです。株式を保有する者ならだれでも魅力的に見えているのです。

 

それ故、

そもそもの価格として成長株は、倍率が高いこと加えて、直近の企業収益と比べてると比較的高い価格で取引される傾向にあります。それ故、成長株全体の投機性が上がり、成長株で成功することは至難の業となっているのです。

 

もしあなたが成長株で利益を目指すのであれば、健全な企業の成長株を適正な価格水準で購入した後、大幅な価格上昇後の急落前に売り抜けるという、なんとも奇跡的な取引をしなくてはいけないのです。

 

財務内容の良い有名な大企業とは?

株式選択の基準として挙げられた「財務内容の良い有名な大企業」ですが、具体的にはどのような企業の事を指しているのでしょうか?

 

『新・賢明なる投資家』では、きちんとその点に関しても解説がなされています。

 

保守的な財務内容

株主資本純資産が、すべての銀行借入までを含めた総資産の少なくとも半分以上のときである。鉄道会社や公益会社であるならばこの数字は30%以上となる。(P220)

 

有名企業・大企業というカテゴリーについても同書は述べていますが、アメリカにおける定義でありますし、時代もかなり変わってきていますので、今日の日本における「大企業」とは何なのかについてまとめておきますね。

 

日本においては「大企業」と言うと一般的には中小企業以外の事を指すようです。

 

いや、あたりまえじゃん。

 

そうなんですが、日本では中小企業については中小企業基本法という法律の中で定義づけが行われてますが、大企業についてはそれがないのです。

 

なので、中小企業とは何かを手掛かりにそれを裏返して理解していくしかないわけで、このような不思議な言い回しになってしまいました。

 

ちなみに、中小企業の定義は以下のようになっています。

 

 中小企業基本法第2条第1項】資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第4号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

 

また、卸売業、サービス業、小売業に関しては、上記とは異なる資本金の額と従業員数にて中小企業として定義されています。

 

なので、製造業における「大企業」の場合には大雑把に「資本金三億円以上、従業員300人以上」と言えるでしょう。

 

とは言え、あくまでもこのような基準は便宜上の物であります。

 

グレアムさん曰く、「自分の基準で区別した大企業や有名企業でも一般常識の範囲内で大きなずれがないのであれば別に構わん」とのことです。

 

ホームバイアスについて

人間は、自分の身近にある企業や、自分の勤めている会社のような「よく知っている企業」に対しては、その投資対象である企業の弱点を詳しく調べようとしなくなる可能性があります。

 

このように、馴染みのあるものに固執する習性ホームバイアスと呼びます。

 

以下に、本書で紹介されている例のいくつかを紹介しておきます。

 

個人投資家は、他の電話会社を全部合わせた枚数よりも地元の電話会社の株を三倍多く保有している。

・よく犯罪者の隣人や親友、あるいは親が愕然としながら「あの子は本当にいい子だったのよ」などとテレビのニュースで語っている。 (P233)

 

自分がよく知っているものに対しては、無意識に警戒心が低くなるのが人間の性なのですね。

 

私も、気を付けたいです。

 

 

まとめ

株式はインフレ対策効果や相対的に高い収益を期待できる

 

株式選択の基準

・十分な、しかし過度にならない程度の分散投資を行うこと。例えば10銘柄以上30銘柄以下
・財務内容の良い有名な大企業を選ぶ事
・長期にわたる継続的な配当金支払いの実績がある事
・ある銘柄を買い付けるに際しては、過去7年程度の平均企業収益に照らして支払うべき価格の上限を決めること 

 

成長株には要注意

 

ホームバイアスに注意

 

  

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

備忘録⑦はこちらから!!

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