『新賢明なる投資家』備忘録⑰第16章(転換社債とワラント)

皆さんこんにちは!

 

この記事は『新賢明なる投資家』第16章(転換社債ワラント)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

jeconomy.hatenablog.com

 

第16章(転換社債ワラント)においては、転換社債ストックオプションのような企業の特殊な資金調達についての考察がなされています。

 

転換社債ストックオプションとは?

具体的なグレアムさんの意見についてはいる前に、まずは転換社債ストックオプションとは一体どのようなものなのか簡単に見ておきましょう。

 

転換社債

 

 転換社債社債の一種類です。普通の社債との違いは、発行されてから一定の期間を経ると、所有者の請求や転換価格の支払いで株式に転換が可能な点です。

 

 1843年にアメリカの鉄道会社が初めてこの種の社債を発行しました。鉄道事業には膨大な資金が必要となりますが、収益発生までにはかなりの時間がかかります。そこで、建設中は債権者に対し利息を払い、鉄道が完成し収益がうまれるようになったら株式に転換することで株の値上りと配当を見込めるような社債を開発したのです。

 

 ※2002年の商法改正によって、転換社債は新株引受権付社債と共に新株予約権社債へと一本化されました。しかし、実質的には両者の内容は異なるので、従来の転換社債は現在、転換社債型新株予約権付社債と呼ばれています。

 

 ストック・オプション:

 

 ストック・オプションとは会社の役員や従業員への報酬形態の一種です。あらかじめ決められた価格(権利行使価格)で自社の株を購入する権利を与えることにより、自社株の価格が上昇した時に、権利行使価格との差が利益となります。

 

 ストック・オプションは、自社の株が上がれば自己の利益になるので、役員・従業員のモチベーションアップに繋がったり、高い報酬を払う事の出来ないベンチャー企業などで導入されています。

 

ワラントと呼ばれるものもありますが、こちらは新株予約証券と呼ばれるもので発行会社の株式を一定の価格(行使価格)で、定められた期間内(行使期間)に、取得できる権利を持つ有価証券の事を指します。

 

グレアムの意見は?

では、具体的にグレアムさんは転換社債やストック・オプションについてどのような意見を持っているのかについて見ていきましょう。

 

転換証券は投資家と発行企業の双方にとって非常に有利といえる。投資家は債権や優先株に対する優れた安全性が確保できる上に、普通株の価値上昇を見込める。発行側は妥当な利子あるいは優先配当を支払いながら資本を調達できるし、見込み通りの業績が達成できたあかつきには、普通株に転換することによって優先債務を相殺できる。つまり双方にとって大変割安といえるのだ。(P206)

 

まずは、転換社債のメリットについて触れていますね。

 

転換社債を発行することによって、投資家は利子の支払いを受けながらも株価が上昇すれば転換して利益を得られるし、上昇しなければそのまま持ち続けることで利子の支払いを受け続けてもいいわけです。企業側にとっても、社債を株式に転換することによって債務解消することが出来るため、割安な資金超調達手段としての可能性がありますね。

 

しかし、

グレアムさんは以下のように述べています。

 

 とはいえ今述べたことは、場合によっては明らかな言い過ぎである。なぜなら、単なる巧妙な仕掛けでは、双方にとってより良い割安状態を作り出せるわけではないからである。(P206)

 

これはどうしてなのでしょうか?

 

グレアムさんは二つの論点を提供していました。

 

①投資家は転換権との引き換えに質や利回りを放棄せざるを得ない

 

②企業は資金調達の引き換えに、将来の普通株式を弱めることになる

 

もちろんこの二つの点についても、色々と賛否両論と議論があるわけです。

 

なのでグレアムさんの結論としては、

 

転換証券も他の証券のようにそれ単体で良いとか悪いとかは判断できません。

 

とのことでした

 

ただ一つ、とても重要なことを言っていたので、その点を引用しておきます。

 

しかし上げ相場の終盤に出てくる転換証券は、全般に満足できる結果を生まない(残念ながら、このような楽観的な時期にほとんど転換社債での資金調達が行われる)。(P207)

 

転換社債は上げ相場で発行されることが多いですが、かならずその後には下落相場が来ます。

 

もし、株式相場が大幅に下落したならば、転換権の魅力はなくなってしまうでしょう。

 

次に、ストック・オプション・ワラントについてのグレアムさんの意見を見ていきましょう。

 

まずはっきり言っておく。われわれは最近のストックオプションワラントの発達を、ほぼ欺瞞、実在の脅威、大惨事の温床だと考えている。(P216)

 

 .........ん、なるほど。

 

正直ここまでたたかれるのであれば、防衛的投資家を目指す私としては、こういうものからは距離をとっておけばいいので、あまり深く突っ込まないで置きたいものですね。

 

バフェットの言葉にも以下のようなものがありましたね。

 

”最も重要なのは、自分の能力の輪をどれだけ大きくするかではなく、その輪の境界をどこまで厳密に決められるかです”

 

自分にとってなんか危険な感じがする。

 

と、思うものには基本的に距離をとっておきましょう、私よ。

 

まとめ

防衛的投資家にとっては転換社債ストックオプションとは距離をとっておいてもいいでしょう。もちろん、転換社債は株式とある程度正の相関を持って動くので、ポートフォリオのほとんどを債券で持っているような方にとっては、持ってもいいかもしれません。とはいえ、一般投資家のほとんどは企業の経営状態のチェック項目として、過剰な量のストックオプション転換社債が発行されていないのかを確認する程度でもいいのではないでしょうか。基本的には、優良普通株式、債券、現金などへの分散投資によってポートフォリオを組めば足りるはずです。

 

 

 

 

備忘録⑱はこちらから!!

jeconomy.hatenablog.com