『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑧第八章(ファンダメンタル主義者のお手並み拝見)

皆さんこんにちは。

 

この記事は、『ウォール街のランダムウォーカ―』第八章(ファンダメンタル主義者ののお手並み拝見)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

 

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ウォール街のランダムウォーカ―』第七章では、テクニカル主義者に対する筆者マルキールさんの意見について見ていきました。

 

結果的には、 テクニカル主義に関してあまり好意的な意見を聞くことが出来ませんでしたが、ファンダメンタル主義についてはどのような意見を持っているのでしょうか。

 

見ていきましょう。

 

ウォール街VS学者

マルキールさん曰く、ウォール街のプロたちはみなファンダメンタル主義だとのことです。では、実際にファンダメンタル主義の人たちはどのような意見を持っているのでしょうか。

 

ウォール街の多くが支持する見方は、ファンダメンタル分析は、時を経るにつれ、ますます強力かつ巧妙になってきているというものである。(P236)

 

将来の方向性を予想するために、アナリストは通常、過去の軌跡をたどることから始める。あるアナリストの言葉を借りれば、「過去に実現された利益成長は、将来の利益成長を占ううえで、最も信頼できる指標だ」というわけである。(P238)

 

なるほど、確かに時代の流れとともに研究が進み前よりもよい運用成績を収めることが出来ているのであればファンダメンタル分析の発展は認められそうですし、過去の収益や利益成長は投資の判断材料として良く用いられていますから、ファンダメンタル主義者のこのような発言は分かるような気がします。

 

では、

当のマルキールさんはこれに対して何と言っているのでしょうか。

 

しかし、このような答えは学者の世界では落第である。過去の成長を分析したところで、将来の成長を予想する役には立たないのである。(P238)

 

あら~

またしても対立するような意見なわけですね。

 

でも、

この意見も良く分かります。

 

ある一時期においてその企業の成長が良かったからといってその成長が将来においても約束されるわけではありませんよね。その理由としては、市場の盛衰や、成長するにつれ会社の規模が大きくなると成長の余地がなくなっていくこと、市場規模自体が大きくなっていかない限り利益が頭打ちになることなどが挙げられますね。実際、市場が好調であった1990年代のアメリカでさえ、毎年の安定成長を達成できた企業は全体の13%程で、2000年初頭においては高成長を維持できた企業が一社も無かったみたいです。

 

証券アナリストが、長期間一貫して高成長を続ける企業を予見することはできない。なぜなら、そんな企業は存在しないからだ。(P239)

 

ここまで言われたらアナリストだって黙っていないわけですよ。

 

「我々の分析が単なる過去の分析だなんて冗談じゃないよ!!」

 

というわけですよ、

 

そこで、

アナリストは学者に対してもっと現実に即した調査をすべきだと言うわけです。

 

ごもっともな事です。

 

例えば、

戦争で人を殺す心理負担を調べるために、刑務所にいる凶悪殺人犯にインタビューするのは当然正しい調査方法とは言えませんもんね。

 

で、

マルキールさんは言うわけですよ。

 

「ええで、受けてたとうやないか」(妄想)

 

マルキールさんはアナリストの反対意見に対抗するために様々な条件を付して再調査をします。例えば、予想期間を変えたり、業界を変えたり、手法の複雑さを変えたり、アナリストの能力を変えたり。

 

結論、

アナリストの予想は

 

素人のシンプルな分析手法と比べても、

安定的な産業についてであっても、

短期予想であっても

長期予想であっても

どんなに優秀なひとだとしても

 

ちゃんとできているとは言えない。

 

というものでした。

 

え~まじで~??

 

別にアナリストの肩を持つわけではありませんが、優秀な彼らの業績予想がそこまで信頼性の高いものではないというはちょっと信じられない気持ちもありますね。

 

とはいえ、プロフェッショナルだからと言ってミスがないなんて考える方がナイーブな考え方かもしれないとも思いました。例えば、防空レーダーを監視する場合、2時間続けると発見率は二分の一にも減少するというデータがありますし、2004年には世界的に有名な医学専門誌『Archives of Internal Medicine』に、フランスの医師らがICU(集中治療室)で死亡した人々の剖検結果についての論文を掲載し、そこには生前診断の約30%は誤診だったと書かれていました。

 

理由付けが何であろうと、専門家だからというだけですべてを任せることはしないべきでしょうね。

 

以前、あるドキュメンタリーでハイパーレスキューの隊長さんが部下に対して信用はするが信頼はしない、と言っていたのをよく覚えています。

 

なんでもそうですが、主体性は重要ですよね。

 

アナリストが予想を誤る要因

本文ではどうしてアナリストが予想を間違えてしまうのかその要因が書かれていたので簡単にまとめておきましょう。

 

①ランダムに発生する事件:

 市場の予想が株価に織り込まれている場合は大きな値動きは期待できません。そのため、一般に市場が大きく動くのは期待や予想が裏切られた場合です。期待や予想を裏切ることを予想するなんて無理ですよね。

 

②クリエイティブな会計による疑惑の利益捻出:

 『賢明なる投資家』では、投資家に対するアドバイスとして会計情報の脚注をきちんと読めというものがありましたね。なぜなら、企業が隠したいことを知るヒントが隠されているからというものでした。

 

③基本的な能力の欠如:

 流行している方法に沿って分析しているだけ、他人の予想にそって予想しているだけ、このような怠惰なアナリストも多く存在しているのが実情でしょう。

 

④セールス活動による拘束と運用部門への流出:

 最高給のアナリストのなかにはその給料のほとんどを分析業務ではなく、機関投資家に対するセールスや、ファンドマネージャーとしてもらう方もいます。その場合、自然と分析に対して割くことが出来る時間や労力が低下するのは明白でしょう。

 

証券アナリスト業務と投資銀行業務との利益相反

 時代の流れとともに、ブローカー業務から投資銀行業務へと事業の重要性は移ってきました。しかし、こうなると顧客である企業のご機嫌取りが必要になってくるわけです。”1990年代に入ると、「買い推奨」と「売り推奨」の比率は100対1にまで広がり、とりわけその傾向は投資業務のウェートの高い大手証券会社に顕著であった。”(P255)

 

 

ランダムウォーカ―信者として

ここまで、ファンダメンタル主義VS学者という対立構造について見てきたわけですが、マルキールさんはその二つの主張を踏まえて、我々投資家に中間的な意見をとることをお勧めしています。

 

私としては、それらの中間をとりたい。確かに、投資家はプロのアドバイスに対する信仰について、もう一度見直す必要があるだろう。しかし私は、多くの同僚たちのように、この分野のすべてを否定するところまでは、まだ心の準備が整っていない。(P274)

 

マルキールさんは、ファンダメンタル主義の人々が継続的に市場に勝つことができないのは明白としながらも、プロの投資が他より優れたパフォーマンスを上げる可能性については認めているのですね。

 

しかし、

とはいえファンダメンタル主義の人たちが正しい判断を下せる可能性がそうは高くないことは譲れないようですね。

 

結局、

私たち個人としてはアナリストの予想が当たろうが外れようがあまり影響がでない様なふらふらとした戦略が必要になるのでがないでしょうか。

 

それもまた、

ランダムウォークという呼称にはあっている気もします。

 

今日はこの辺で終わります。

 

まとめ

ウォール街はファンダメンタルの影響が強い

 

・学者的にはプロの予想をそこまで評価できない

 

・結局アナリストが予想を当てようが当てまいがあまり重要なことでは無い。

 

・主体性をもって投資に臨むこと

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

 

 

備忘録⑨はこちらから!!

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『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑦第七章(テクニカル戦略は儲かるか)

皆さんこんにちは。

 

この記事は『ウォール街のランダムウォーカ―』第七章(テクニカル戦略は儲かるか)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

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ウォール街のランダムウォーカ―』第七章では、テクニカル分析の有効性について考察されています。

 

値動きはランダムだと主張するランダムウォーカ―理論とは全くの対極に位置すると言ってもいいテクニカル戦略、その有効性はいかほどなのでしょうか。

 

見ていきましょう。

 

マルキールさんの立場

まずは著者である、マルキールさんがテクニカル戦略についてどのような態度をとっているのか大枠を見ていきましょう。

 

詳細な調査によると、テクニカル信者には穴の開いた靴や衿(えり)の擦り切れたシャツを身にまとっている者が多いということが知られている。私個人の経験では、失敗したテクニカル信者の成れの果ては何人か知っているが、成功したテクニカル信者というものには、ついぞお目にかかったことがない。(P196)

 

テクニカル分析は、学者の世界では異端の教義であり、それを非難するのは私にとって喜びでさえある。私を、このような弱いものいじめに走らせる動機は、第一に、この手法が明らかに間違っていること、第二に、いじめやすいこと、である。(P198)

 

ボロクソに言っていますね(笑)

 

果たして当時の調査がすべて現在の市場にも当てはまるのかと言ったら、それは分からないのですが、それでも、過去の株価の動きが未来の株価の動きに影響するというテクニカル分析の考え方は、ランダムウォーク理論を提唱するマルキールさんにとって受け入れられない考え方であることはわかりました。

 

余談ですが、

ウォール街のランダムウォーカ―』が出版された当時、当然テクニカル派の人々からも猛烈な反対があったみたいです。本も破かれたことがあるらしいですよ(笑)

 

では、

マルキールさんはどうしてテクニカル戦略は間違っていると主張するのでしょうか。ここからは、その主張の根拠についてみていきましょう。

 

株式市場にモメンタムはあるのか?

まずはじめにマルキールさんが主張していることは株式市場にモメンタムなどはないという事です。

 

モメンタムがどういうものなのかについては文中で簡潔にまとめられていたので引用させていただきましょう。

 

モメンタムとは、上昇し続けてきた銘柄は引き続き上昇を続けるし、下がり始めた銘柄はさらに下がると言う傾向のことを言う。(P199)

 

前章で、テクニカル分析には前提条件が二つあるという事を学びましたね。

 

詳しくはこちらから⇓

jeconomy.hatenablog.com

 

そして、

そのうちの一つは、株式相場には「トレンド」があるというものでした。

 

マルキールさんがモメンタムについて異議を申し立てているのは、このテクニカル分析における前提条件の一つ「株式市場にはトレンド(モメンタム)がある」を崩す意図があるわけです。

 

では、その根拠とは。

 

確かに、株価の上昇が数日にわたって連続することは時々見られる現象である。しかし、それは何も特別な現象ではない。たとえ裏表が等しい確率で出るコインを投げたとしても、表が何回も続くことはあるのだ。株価の上昇あるいは下降が連続して起きる頻度は、コイン投げで表や裏の連続が何の規則性もなく起こるのと変わらないと言える。(P200)

 

テクニカル理論では過去の株価の動きが将来にも影響を与えトレンドの形成につながると主張するわけですが、マルキールさんに言わせれば、「そんなトレンドはコイントスでも作れるわ、ぼけぇぇ!」ということなのでしょう。

 

もう少し詳しく見ていきます。

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上の図は、マルキールさんが実際に行ったある実験の結果を表したものです。確かに、テクニカル理論派の人達が主張するように上昇が続く場面や、下降が続く場面を見て取ることが出来、トレンドが存在しているかのようにも見えます。

 

しかし、

実は、このチャートはコイントスをして結果が表の場合は価格を上昇させ、結果が裏であった場合には価格を下落させるというルールに基づいて作られた、いわば完全にランダムな相場のチャートなのです。

 

株価がどう動くのかはランダムであり予想できるものではないというマルキールさんの主張は正しいようにも思えますね。

 

テクニカル戦略は儲かるのか?

マルキールさんはテクニカル戦略をボロクソに言っているわけですが、もしそれが本当ならテクニカル戦略がここまで世の中に広く浸透しているのはどうしてなのでしょうか?

 

多くの人に浸透しているのは、実際にテクニカル戦略によってお金を儲けることが出来ているからではないのでしょうか?

 

また、

株式市場にはデイトレーダーと呼ばれる人たちもいますし、なんとなく儲かっているイメージはありますよね。

 

マルキールさんの主張を見てみましょう。

 

私は、テクニカル戦略が絶対に儲からないと言っているわけではない。実際、テクニカル戦略を用いたために損失を被ったと言う投資家は少ないはずだ。ポイントは、むしろこうだ。単なる「バイ・アンド・ホールド」戦略、つまり、ある銘柄ないしは銘柄群を買い、長期保有することが少なくともテクニカル戦略と同じくらい、ないしはそれ以上に儲かるものだということである。(P204)

 

マルキールさんはテクニカル戦略でも利益が上げられる可能性は認めていますね。ただし、その利益はもっと単純かつ安全な「バイ・ホールド戦略」よりも高いものであるとはいえず、より効果的な戦略とは言えないと言うわけですね。

 

そういえば、

あの有名な経済学者ケインズによる投資のアドバイスとして「もっとワインを飲め」というものがありましたね。お金とは目的ではなく何かをするための手段。自分が何のために投資をするのかをきちんと考えて安定的なポートフォリオを組んだなら、一年に数回のリバランスぐらいにして、自分の人生をきちんと生きなさいとの事でした。

 

ケインズのアドバイスに関してはこちらから⇓

jeconomy.hatenablog.com

 

そのため、

テクニカル手法が優れた方法だと主張するには、バイ・ホールド戦略と同じだけの利益を上げられるだけではいけないのですね。むしろ、他の要素で負けている分テクニカル戦略にはそれを上回るパフォーマンスを期待しなくてはいけないわけです。

 

しかし、

このパフォーマンス面に関してもマルキールさんは

 

テクニカル戦略でバイ・ホールド戦略のパフォーマンスを超えるのは難しいです。

 

と一蹴してるわけです。

 

まあ、この辺はかなり激しい論争があるようなので深くはつっこみませんが、マルキールさんは、有名どころのテクニカル理論(ダウ理論・相対強度法など)に関しては全て検証してこの結論を出しているという事は書いておきましょう。

 

投資家としてどのようにすべきか

では、この『ウォール街のランダムウォーカ―』第七章から私たちはどのような投資のヒントを得ることが出来るのでしょうか。

 

もちろん、

テクニカル分析をかなり信用して取引していらっしゃるかたもいるとは思いますし、それを否定するつもりは毛頭ないのですが、私個人の意見としてはバイ・ホールド戦略をとるほうが安全な投資方法だと感じますね。

 

というのも、一つ目にやはり、手数料の問題があります。

テクニカル分析をする場合はバイ・ホールド戦略に比べて圧倒的に取引回数多い傾向があります。取引コストは、確定的な損失です。不確実性の多い投資において、取引コストという確実な損失をどれだけ抑えられるのかは最も重要な課題です。テクニカル分析では市場の様々な相関を根拠にしますが、そのような相関から得られる利益のほとんどは取引コストによって相殺されてしまう事が研究で明らかになっています。テクニカル分析によってバイ・ホールド戦略よりもかなり高いパフォーマンスが上げられる確実な根拠がない限り、バイ・ホールド戦略が合理的だと感じます。

 

二つ目の理由としては、テクニカル戦略はタイミングに重きを置くことになるからです。『賢明なる投資家』などの他の投資書籍でも語られていますが、タイミングで取引をするのは投機になる可能性が高いですし、実質的な価値によるクッションがない場合には予想を外した時の損失も大きくなってしまうでしょう。

 

確信なきテクニカル戦略は死

 

が私のモットーです

 

まとめ

※マルキールさん曰く

・トレンドなんてない

・パフォーマンス大したことない

・手数料高い

・バイ・ホールド戦略でええやん

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

 

 

備忘録⑧はこちらから!!

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『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑥第六章(株価分析の二つの手法)

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備忘録①は以下よりどうぞ!

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第六章においては、主な二つの株価分析手法について考察されています。それぞれどのような特徴があり、また一般投資家はどのような戦略をとっていけばいいのでしょうか。

 

実際に見ていきましょう。

 

テクニカル分析ファンダメンタル分析

 株式市場では長い間、ありとあらゆる方法で将来の株価を予想しようとする試みが繰り返されてきました。そのなかでも、多くの人達が利用している株価分析アプローチには主に二種類、テクニカル分析ファンダメンタル分析があります。

 

それぞれどのような分析手法なのでしょうか?

 

テクニカル分析

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テクニカル分析は、変動する価格や需給、投資家の行動パターンに注目して株価の分析を試みる手法です。この手法を用いる場合は、企業のビジネスや経営状況よりも、売買のタイミングが重視される傾向があります。

 

テクニカル分析が何かを一口で語るとすれば、株価チャートをつくり解釈することだと言えるだろう。(P168)

 

 上の画像のように過去の取引を表したチャートを分析することにによって、将来の相場動向を探る手掛かりを得ようとするのはテクニカル分析の最たる例ですね。

 

また、

テクニカル分析は二つの重要な前提に立脚しています。

①チャートはファンダメンタルな情報を織り込んでいる:

 過去の株価の動きには、既に企業の財務状況や利益、配当に関する情報は反映されているという考えですね。

 

②相場にはトレンドがある:

 相場には、株価の上昇が持続する上昇相場や、株価の動きが停滞するレンジ相場、株価の下落が持続する下降相場の三つがあるとされています。

 

 

ウォール街のランダムウォーカ―』第六章でマルキールさんはテクニカル分析の問題点について触れています。

 

 もっとも、私としてはチャート分析を弁解するよりも、理異論上の問題点を指摘するほうがよっぽど簡単である。(P178)

 

一点目、

チャーティストはトレンドが形成された後にしか投資することはないし、またそのトレンドが崩れた後でしか売りに出ないという事だ。”(P178)

 

チャートとは過去の取引の集積です。あなたが上昇トレンドの形成をチャートから確認したとしても、あなたが見つけたそのトレンドの形成は他の人の取引によるものなのです。要はその段階ではすでに株価が高い可能性があるのです。

 

二点目、

”この手の手法は、結局のところ自己矛盾に陥るものだということである。”(P158)

 

この意見はベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』の中でも触れられていましたが、要は一旦一つの手法が市場に浸透してしまうと、それによって利益を上げることが難しくなってしまうわけです。

 

みんなが同じ買いシグナルで買いを行うのであれば、それは早押しクイズのテレビ番組のように誰が一番早くボタンを押せるかの勝負になってしまいます。

 

しかし、

それならできるだけ早い段階でシグナルを見つければいいのではないかという意見もあるかと思いますが、なるだけ早く見つけようとした場合は確実性が下がりますので、それでは元も子もないわけです。 

 

ファンダメンタル分析

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ファンダメンタル分析は、企業の売り上げ高や利益、財務状況などの情報をもとに株式の本質的な価値を分析する手法になります。テクニカル分析が市場の群集心理に大きく影響を受けるのに対し、株式の本質的な価値を重視するファンダメンタル分析は、市場の心理ではなく、現在の株価である時価と本質的価値の差に注目するものです。

 

証券のファンダメンタル価値を推定する際に最も重要な作業は、その企業の将来における利益や配当を予想することである。(P181)

 

ファンダメンタル理論に関しては、第一部で取り扱ってもいるので説明はこの編で割愛させて頂きます。 

 

もちろん、

同書内ではテクニカル分析の時と同様に、ファンダメンタル分析の問題点についても指摘がなされています。

 

一つ目、

”情報や分析が必ずしも正しいとは限らない”(P186)

 

ファンダメンタル分析では企業に関する様々な情報を駆使して分析していくことになります。

 

しかし、

どのような情報を、どのくらいの量で、どのように分析するのかは、分析する人の裁量に委ねられているのです。そして結局、その分析の正しさは結果論で判断するしかありません。なぜならたとえ過去に利益をもたらした情報であったとしても、将来において同じように適用できるかは分からないですし、反対に過去失敗した分析が将来において有効でないとすることもできないからです。

 

加えて、

同書内では情報そのものが誤って伝えられる可能性についても触れられています。

 

 

二つ目、

”価値の推定を間違う可能性が指摘できる”(P186)

 

例えば、

株価の割高・割安を判断する基準の一つには株価収益率がありますが、仮にその値が分析の結果25倍だったとして、それは割高なのでしょうか、それとも割安なのでしょうか。

 

これは本当に難しいところです、

日本の一部上場企業の平均は約15倍とも言われていますから、それよりは割高なのではないかとも考えられます。

 

しかし、

IT系の企業の場合は株価収益率は高めに出る傾向がありますので、一概に割高とは言えない面もあります。

 

つまり、

結局は分析する人が他にどのような要因を考えるのかによって株式の価値はブレるものであるわけですから、価値の評価に関しては、たとえ優秀なアナリストであろうとも間違う可能性があるわけです。

 

 

三つ目、

”そして最後の問題点は、たとえ情報とそれに基づく推定結果のいずれもが正しかったとしてもなお、あなたの買った株の値段は下がるかもしれないということである”(P187)

 

仮に貴方がポーカーでポケットエース(A二枚)を持っていたとしても、勝てる可能性は85%ほどであり、絶対に勝てるわけではありません。

 

貴方の分析結果はあくまでも予想の範疇を超えるものではないわけです。

 

また、

市場の参加者はあなただけではありません。ポケットエースは最強の手札ではありますが、テーブルに参加する人が増えるにつれて手札の勝率は減少します。例えば、9人テーブルの場合、勝率は31%しかないのです。

 

結局のところ、

市場があなたの分析結果にどのような結果を出すのかは、他の人たちの手札やテーブルの状況によるわけです。

 

成功するための三つのルール

テクニカル分析にもファンダメンタル分析にもそれぞれ問題点が存在していることをここまで見てきたわけですが、第六章の最後において著者のマルキールさんは、それら問題を踏まえたうえでどのように株価を判断していくべきなのか、以下三つのルールを示してくれました。

 

①今後五年以上の利益成長率が市場平均以上の銘柄を買うこと

 

②株価がファンダメンタル価値以上になっている銘柄には手を出すな

 

③投資家が「砂上の楼閣」を作れるようなストーリーが描ける銘柄を探そう

 

ここまでの内容が簡潔にまとめられていますね。

 

もちろん、

これを投資に活かすためにはもう少し考える必要がありますが、ともあれ『ウォール街のランダムウォーカ―』を読み返すにあたっては、この三つのルールがどうして重要なのか説明できるように読み返すことで効率的に復習が出来そうです。

 

第六章はこの辺で終わります。

 

まとめ

ファンダメンタル分析テクニカル分析にはどちらも問題点がある。

 

・三つのルールで問題点をヘッジしよう。

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。 

 

 

 

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『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録⑤第五章(ファンダメンタル価値の正体)

皆さんこんにちは。

 

この記事は、「ウォール街のランダムウォーカ―」第五章(ファンダメンタル価値の正体)についての備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

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前章の、第四章までは約130ページにも及んでバブルについて学び。そこから株式投資に必要な教訓をいくつか得ることが出来ました。

 

第五章では、バブル景気の時に見られた砂上の楼閣理論ではなく、ファンダメンタル理論についてよく考察されています。

 

実際に見ていきましょう。 

 

さて、

 投資と投機の違いにの一つには、比較的現実的でかつ確実な期待に基づくかどうかがありました。

 

もちろん、

それも期待や予想の範疇を出るものではないのですが、比較的だとしても確実な予想を出すためには、株式投資について考える際、現在の株価水準が適正かどうか、それぞれの株式が割安か割高かを判断するための合理的な基準はどうしても必要になってくるわけです。

 

ではその基準とはどのような物なのでしょうか。

 

 投資家には、たとえ非常に大まかなものではあっても、現在の株価水準が適正かどうかを判断するよりどころになる、理論的な尺度が必要である。果たしてそんなものがあるのだろうか。私はあると信じている。ただしそれは、ファンダメンタル価値だけに基づくものでもなければ、砂上の楼閣理論だけに基づくものでもない。(P139)

 

マルキールさんが言うには、株価の水準を判断するための基準はファンダメンタル理論にも、砂上の楼閣理論にも、完全に乗っかることはなく、両方の側面を含んでいるとのことなのですね。

 

では、

まずは、ファンダメンタル的な側面から見ていく事にしましょう。

 

四つの株価決定要因 

 マルキールさんは第五章において、主な四つの株価決定要因を示してくれています。

 

期待成長率

 最初に述べられているのは、企業が将来にわたってどのような成長をしていくのかに関する期待、期待成長率です。

 

なぜ、

期待成長率は株価に影響を与えるのでしょうか。

 

マルキールさんは成長率の持つ大きな力を知る重要性を示しています。

 

投資の意思決定を行う上で、「複利」の意味することの重要性を十分理解しているひとは、ほとんどいないといってもいい。(P141)

 

成長率は一般的に百分率で計算され、「年平均~%の成長が見込める」のように使われます。そのため、実際に配当などの結果を計算する場合は複利計算によって求めますが、この複利の持つ力はとんでもないものです。

 

具体的に計算してみますと、

例えば、配当成長率が15%と25%の場合を比べてみますと、十年後には15%の場合配当額が約4倍になり、25%の場合約9倍になります。

 

これについてさらに二十五年後を考えてみると、

15%の場合約32倍に、25%の場合には約264倍になります。

 

この具体例から以下複利の重要な点が見えます。

 

複利の違いは将来において大きな差になる。

 

複利は増加量が指数関数的に増加していく。

 

そして

この二つのポイントを理由に、マルキールさんは以下のようルールを導くわけです。

 

株価評価の第一のルール:

 合理的な投資家は、配当の成長率が高いほど、株式に対して高い価格を支払うはずである。

 

第一のルールの付則:

 合理的な投資家は、成長率の期待持続時間が長いほど、株式に対して高い価格を支払うはずである。 (P144)

 

支払配当額

この二つ目の株価決定要因についても、投資に興味がある人はすんなりと感覚的に受け入れられる話ではないでしょうか。

 

株価評価の第二のルール:

 合理的な投資家は、他の事情が等しければ、企業の利益のうち現金配当として支払われる割合が多ければ多いほど、高い株価をつけるはずである。(P147)

 

配当が高いなら株価は高い。

 

そりゃそうだ。

 

しかし、

このルールについてはもう少し注意してみておく必要があります。

 

まず一つ目に、

配当額は他の株価決定要因とも関係してくるという点です。

 

配当が高い銘柄を見つけた時、賢明な投資家であれば「ラッキー!!」なんて軽い気持ちで手を出すようなことはないはずです。「どうして高配当なのか」についてしっかりと考えるはずなのです。そして、考えた結果、「高配当にしないと資金が集まらないのでは?」「企業の成長余地が乏しいのでは?」など、様々な事に気づくでしょう。

 

あくまで、

他の事情が同じならという前提条件に気を付けることです。そして、胸に止めておくべきことは、市場においてすべての条件が等しい銘柄などは存在しないということです。

 

二つ目に注意すべき点は、

「現金配当」であるという点です。

 

株主は株式分割もしくは株式配当に狂喜すべきではない。(P146)

 

どうして、株式配当株式分割は狂喜すべきではないのでしょうか。

 

ポイントは、「ダメだ!!」と言っているわけではなくて、「喜ぶようなことではない!!」とマルキールさんが言っているということです。

 

株式分割や、株式配当にも利点と言える面もあります。

 

例えば、株式が希薄化されることで流動性が上がったり、持ち分が増えることで現金配当が増えたりとか、

 

しかし、

基本的には株式配当後の一株の持ち分は、配当や分割の割合に応じて減ってしまうわけですから、別に喜ぶようなことでは無いわけです。

 

現金配当が増えるのかどうかが、あくまでも重要だという事を理解しておきましょう。

 

リスク

株価評価の第三の基本ルール:

 合理的な(つまり、リスクは大きいよりは小さいほうがいいと考えるような)投資家は、他の事情が等しければ、その株式のリスクが低ければ低いほど、高い価格を支払うはずである。(P148)

 

当たり前っちゃ当たり前ですよね、しかしどうですか、皆さんは他の事情が等しければリスクが低いほど高い価格を支払いますか?

 

もちろん、

リスクは低いに越したことはないですよ、私も。

 

しかし、

ここで一つ個人的に気になったのは、もしより高い価格を支払ってしまった場合、それによって期待収益が変化してしまうという点です。

 

例え、リスクが低くとも投入する投資資金が多くなればそれだけ失うときの損失も大きくなるのですから。

 

もちろんとはいえ、

同じようなリターンが得られる場合にはリスクの低い方を選ぶことには変わりはありません。増しては、価格差が小さい場合は、マルキールさんの言う通り、リスク回避の方向に投資家が動くと考えてもよいでしょう。

 

あくまでリスク選好も一要因であり価格の正当性を大枠に捉えているに過ぎないという事を私は言いたいわけです。

 

金利水準

四つ目の株価決定要因は金利水準になります。

 

金利水準はどのように株式の価格に影響しているのでしょうか。

 

ウォール街のランダムウォーカ―』では、80年代初めの債券市場を例に挙げていました。

 

80年代初頭、優良社債の利回りは15%にもなり株式から期待されるリターンを遥かにしのいでいました。

 

結果、

株式市場の資金が債券市場へと流れ込み、株式市場は急落したのでした。

 

これとは逆に、

金利が非常に低い時は株式の方がはるかにリターンが高いので、債券市場の資金が株式に流れてくるわけです。

 

『賢明なる投資家』などの有名な投資本で株式と債券で分散投資をする重要性について解説されているのは、株式市場と債券市場における上記のような資金流入の関係が一つの理由となっています。

株価評価に関する第四の基本ルール:

 投資家が合理的であって、他の事情が等しければ、金利水準が低ければ低いほど、株価は高くなる。(P150)

 

株価決定要因における注意

ここまで、ファンダメンタルな株式の価値の決定要因について見てきましたが、これらの要因全体における注意点が三つ同書内で提示されています。

 

①未来の正しさを証明することは不可能:

 完璧に予想が出来るなら、株式投資で損をする可能性はゼロに等しいはずです。しかし、現実問題そのような事はありえません。どのような方法を用いても、私たちが出来ることはせいぜい、正しいであろうことを合理的に予測することなのです。

 

②不完全なデータ:

 銘柄を評価するにおいて、十分なデータとはどのようなものでしょうか。ましては、過去のデータをいくら調べたところでそれが未来に起こることの確実な根拠にはなり得ません。自己の判断は思うよりも軟弱な基盤の上に立っているのだという事を肝に銘じておくべきです。

 

③市場の評価はブレる:

 ファンダメンタルな価値がどうであれ、市場が強気な時は株価が高めに評価され、弱気な時は低めに評価される傾向は否めません。ある銘柄が一期間において、適正な株価で取引されているからと言って長期的に正当な評価を受け続けるかはまた別の問題です。

 

まとめ

 これまでに展開してきたファンダメンタル価値学派の議論を踏まえて言えることは、株価には一定の基準が存在するが、しかしその基準はきわめて柔軟性に富んだ、あてにならないものでもあるということだ。(P159)

 

マルキールさんは、ファンダメンタル理論に基づき、株価の価格形成にはここまでみてきた様々な要因が関係しており、それらはまた価格判断の基準になり得ると言っていますね。

 

しかし、

ファンダメンタルな基準だけでは説明できない部分も市場には多く存在しているし、ファンダメンタルな基準そのものもきわめて柔軟なもので、どのような株価でも正当化できてしまう可能性を持つとも言っています。

 

結局は、

砂上の楼閣理論にしろ、ファンダメンタル理論にしろ、適切な範囲で、適切な対象に、適切な時期に、適切に運用できるかどうかが最も重要な点だと私は考えます。

 

具体的にどのように運用していけばいいのかは、本書の2部、3部で触れられていくはずです。一緒に見ていきましょう。

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

 

備忘録⑥はこちらから!!

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『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録④第四章(史上最大のバブル)

皆さんこんにちは。

 

この記事は、『ウォール街のランダムウォーカ―』第四章(史上最大のバブル)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

jeconomy.hatenablog.com

 

ウォール街のランダムウォーカ―』第四章では、前章に引き続きバブルについて述べられていますが、特に2000年初頭のインターネット・バブルについて詳しく述べられています。

 

このバブルから、本著はどのようなアドバイスを投資家にしてくれているのでしょうか。

 

実際に見ていきましょう。

 

インターネット・バブル

インターネット・バブルとは一体どのようなものだったのでしょうか。

 

適宜、本文を引用しながら見ていく事にします。

 

金融学者のロバート・シラーはその著『投機バブル 根拠なき熱狂』の中で、バブルを「ポジティブフィードバック・ループ」と表現している。(P106)

 

まずは、どのようにインターネット・バブルが膨らんでいったのかについてですが、引用部にある通り、バブルの発生には「ポジティブフィードバック・ループ」という現象が見られます。

 

例えば、オランダであったチューリップ・バブルについて考えてみますと。

 

1. 生産家、中間業者などがチューリップの球根を買い占める。

 

2. 球根の価格が上がり始める。口コミの発生。

 

3. 一般投資家が参入し始め、さらなる資金が流れ込む。

 

4. 球根の価格が上がる。メディアなどの関心が高まる。

 

5. 一般人が参入し始め、さらに資金が流れ込む。

 

6. 球根の価格が上がる。

 

7. あとは、繰り返し。

 

 このように、チューリップに関するポジティブなフィードバックが繰り返されることによって、価格が上昇し続けバブルになっていくわけです。

 

インターネットバブルについても同様で、まずは、プロの投資家などによって一通りインターネット関連銘柄が買い上げられ、その株価上昇によって、さらなる投資家の参入が誘引され、さらに株価が上昇、あとは銘柄に対するいいイメージが広がっていくだけです。

 

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結果、

インターネット関連銘柄が多いNASDAQのナスダック総合指数は、1996年には1000前後で推移していましたが、1998年9月に1500を、1999年1月には2000を突破し、2000年3月10日のピーク時には5048まで高騰しました。このような傾向はアメリカの株式市場だけではなく、ヨーロッパやアジアや日本の株式市場でも見られました。

 

二〇〇〇年初めに行われたある投資サーベイによると、株式に対する投資家の期待リターンは、年率平均一五%から二五%、あるいはそれ以上にもなっていた。一九八二年から九九年までの実績としての株式市場平均リターンは一八%にも達していたのだから、それも無理からぬことではあった。(P108)

 

これは凄いですね、

2016年のデータ*では直近20年間のS&P500(米国の代表的株価指数)の平均リターンは8.19%でした。(引用*:“Quantitative Analysis of Investor Behavior, 2016,” DALBAR, Inc. www.dalbar.com)

 

とはいえ、

これもバブルなわけですから、何かしらのきっかけではじけてしまうわけです。

 

インターネットバブルの場合には、連邦準備制度理事会の米ドル利上げを皮切りに、株価は急速に下落しました。あとは「ポジティブフィードバック・ループ」ならぬ、「ネガティブフィードバック・ループ」によって、売りが売りを呼ぶだけです。

 

その後、

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件も相まって、2002年には1000台までナスダックは下落しました。

 

どうしてバブルにはまるのか?

文中で、マルキールさんはこのように述べています。

 

”なぜ人間の記憶はこんなにも短命なのだろうか。なぜ株式相場だけは、あらゆる歴史の教訓と無縁なのだろうか。私には分からない”(P135)

 

おっしゃる通りです。

 

ロバート・シラー教授のポジティブフィードバック・ループ理論からも分かるとおり、バブル中に株価が上がっているのは、自分よりも愚かな投資家が存在しているからです。

 

こんな銘柄高すぎて買うわけないでしょ(笑)

 

このような投資家が多くなれば株価など上がりようがないわけです。

 

そしてそうであるならば、

バブルのように株価がファンダメンタル価値から大きく逸脱している状態では、遅かれ早かれその価格が崩れることは想定されて然るべきはずです。

 

しかし、

バブルは繰り返されていくのです。

 

インターネットバブルの後、2008年にはアメリカで住宅バブルが発生し、リーマンショック発生の一要因になってしまいました。

 

なぜ繰り返されるのか。

 

この問題に対しては、短期的な利益を望んでしまったり、集団の意見に飲み込まれてしまうといった、人間の心理性向も影響してるだろうと予想されますが、本当の原因はわかりません。

 

しかし、

分からないとはいえ、この何度も繰り返されるバブルから教訓を学ぶ事はできるはずです。

 

では、その教訓とは、

ウォール街のランダムウォーカ―』第四章においてマルキールさんがきちんと語ってくれています。

 

私の個人的経験に照らしてみても、一貫して株式市場で負け続けているのは、チューリップ・バブルの時代から繰り返される相場の過熱に身を任せてしまうタイプの投資家なのである。~中略~ただ気を付けなくてはいけないのは、一夜にして大金持ちになれるかもしれないという投機の馬鹿騒ぎの中で、大切な財産を賭けたくなる誘惑に負けないことだ。(P136)

 

前章においても繰り返し述べられているように、長期的に堅実な投資を心がけることが重要であり、投機は慎めということですね。

 

ここまで約130ページを使って、

 

頼むから投機に巻き込まれるなよ!!

 

とマルキールさんが言うわけですから、本書において最も重要なメッセージの一つと言ってもいいかもしれませんね。

 

 

 

まとめ

・投機が投機を呼び込むことでバブルに

 

・短期でお金持ちになれるなんて考えるな

 

・真面目が一番

 

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

 

備忘録⑤はこちらから!!

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『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録③第三章(株価はこうして作られる)

皆さんこんにちは。

 

この記事は、『ウォール街のランダムウォーカ―』第三章(こうして株価は作られる)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

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前章、第二章では過去のバブルを振り返り、投機的取引の誘惑に打ち勝って長期的なリターンを目指すことの重要性等を学びました。

 

第三章においても引き続きバブルという現象について述べられています。ただ、前章との違いは、チューリップバブルや南海会社泡沫バブルは一般市民の投機的行動にフォーカスした内容であったのに対し、第三章で扱われるバブルは機関投資家のようなプロフェッショナルを中心としたものになっています。

 

果たして、

証券取引・投資のプロである彼らならば、バブルという名の市場の狂気から逃れることができるのでしょうか?

 

プロも例外ではない

結論から申し上げますと、投資のプロフェッショナルであっても市場の狂気から逃れることは出来ないでしょう。

 

それどころか、これまで歴史上見られてきたバブルには少なからず機関投資家のようなプロがその原因の一端を担ってきたことは明らかなのです。

 

 実際、プロの投資家たちも一九六〇年代から九〇年代にかけて、いくつかの明らかに投機的な動きに加担してきた。そういう場合、機関投資家が株式を積極的に買ったのは、ファンダメンタル価値価値理論に照らして株式が過小評価されていると感じたからではなく、自分たちよりも愚かな連中がより高い値段で買うだろうと予想したからにほかならない。(P62)

 

このことをより理解するために、1980年代のアメリカで起こった新規公開株(IPO)ブームを見ていきましょう。

 

1980年代のアメリカIPOブームにおいて最も中心的な役割を果たしたのは、バイオテクノロジー株でした。人口増加や環境問題などの社会問題解決への期待から、連日メディアではバイオテクノロジーがもたらす可能性について話されていました。

 

そんな社会情勢の中でバイオテクノロジーへの関心の高まりは、バイオテクノロジー株の価格にも反映され始めるのです。

 

1980年に株式公開されたバイオ業界最大手のジェネンテックは、株式売り出し後わずか20分で価格は三倍にも上昇。

 

これは、バイオテクノロジー株に対する期待を加速させ、バイオテクノロジー株ならばとりあえず買っておこうといった投機的な取引を多く誘引してしまいました。

 

結果、

怪しい企業への投資が増えるだけではなく、なかには企業の売り上げの何十倍もの株価で取引されるなど、とても合理的な投資行動とは感じられないほどに市場は加熱してしまったのです。

 

もちろん、

結末は皆さんのご想像通り悲劇的なものです。

 

1980年代半ばにバイオ株が全体的に4分の3程度の価格下落を記録、追い打ちをかけるように1987年には市場全体の下落にも遭遇。

 

こうしてまたしても多くの人々が、市場の狂気に飲み込まれてしまったのでした。

 

え、

いやちょっと待って、プロはどこにでてきたの?

 

もちろん

それについてもきちんと言及していきます。

 

金融市場における特徴の一つには、市場に投機的な需要がある場合、その需要を満たすための手段を即座に用意できてしまうというものがあります。

 

そして、

IPOバブルのような投機的な取引の需要を満たすためには、株式公開を手伝ってくれる証券会社の存在が不可欠なのです。

 

重要な点は、

IPOを販売する証券会社にとっては、IPOが売買されさえすればその手数料が利益となるので、市場が求めるがままにIPOを用意することには大きなインセンティブが存在してしまうということです。

 

簡単に言えば、

”危ないかもしれないけど投資家がIPO欲しいって言ってるんだから用意しますよ。

別に、証券会社は手数料で稼げるので損しませんし。”

 

ということですね、

 

文中にもこのような表現がありました。

 

タバコの箱に健康への害が注意書きされているからといって、それが愛煙家にたばこをやめさせることにはならないのと同様、「この投資はあなたのお金のために危険です」という警告も、どうしても投資家が自分のお金をつぎ込みたいと固く決心している場合には、決してそれを止めることはできない。(P65~66)

 

果たして、

粗悪なIPO株を買う方が悪いのか、売る方が悪いのか、この点も一つ大きな論点ではありますが、何はともあれ、金融市場のプロであっても投機的な市場の狂気に一枚かんでいるという事は理解していただけたのではないでしょうか。

 

もう一つ、

アナリストの面からも見ておきます。

 

投機的な価格上昇は砂上の楼閣理論によって説明されることが多いわけですから、証券分析のプロフェッショナルであるアナリストについては、証券の実質的価値(ファンダメンタル価値)を理解することが可能で、そのためアナリストは市場の狂気には飲み込まれないのではないかとも考えられます。

 

砂上の楼閣理論・ファンダメンタル理論については第一章で、

jeconomy.hatenablog.com

 

しかし残念ながら、

歴史上、証券分析のプロであるアナリストであっても市場の脅威から逃げきれなかった例はたくさんあるようです。

 

1980年代のバイオテクノロジー株ブームも例外ではありません。

 

アナリストの予想によれば、インターフェロン*の売上高は、一九八二年に一〇億ドルを超えるというものだった。現実には、この成功商品の売上高は八九年にようやく二憶ドルになったに過ぎなかったが、砂上の楼閣を築く妨げになるものではなかった。アナリストたちは、あと二年たてばバイオ会社の収益は飛躍的に伸びると予想していた。そして、その予想は裏切られ続けた。(P92)

*インターフェロン抗がん剤の一種

 

私はこの馬鹿げた水準になった株価を、証券アナリストたちがどのように正当化するのかを興味深く読んだものである。(P92)

 

アナリストだからといって実質的な価値を求められるアナリストばかりではないことが分かりますね。

 

知らず知らずのうちに、間違った状況に対してそれらしい統計的分析に基づいて予想を立ててしまっているのですね。

 

もちろん、

これはアナリストだけに見られる誤りではないのだと私は個人的に感じます。

 

人間には、自分のミスに対しては外的な要因を見つけてしまう傾向(自己奉仕バイアス)や、たまたま自己の仮説に一致しただけの事を重要視してしまう傾向(確証バイアス)があることが科学的に認められています。

 

アナリストもプロフェッショナルであれ、認識の間違いを起こすことは想定されて然るべきことでしょう。

 

とは言え、

アナリストの誤った予測もまた、一般投資家の投機的行動に拍車をかける一要因であったことについては間違いのない事でしょう。

 

そういえば、

アメリカの著作家であるマーク・トウェインによって広められた言葉に

 

”世の中には3種類の嘘がある: 嘘、大嘘、そして統計だ”

 

というものがありましたね。

 

数字がもっともらしいなんて理由で自己の判断を誤らないように気を付けたいです。

 

まとめ

・株価には、その時の投資スタイルや流行りが上乗せされることがある。

 

・プロであれど市場の狂気にさらされる

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

 

備忘録④はこちらから!!

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『ウォール街のランダムウォーカ―』備忘録②第二章(市場の狂気)

皆さんこんにちは。

 

この記事は『ウォール街のランダムウォーカ―』第二章(市場の狂気)の備忘録になります。

 

備忘録①は以下よりどうぞ!

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第一章では、市場を予測することは不可能であるとするランダムウォークの立場について学ぶとともに、とはいえ市場では伝統的なファンダメンタル学派と砂上の楼閣学派の二つによって市場予想が行われてきたと言う事を学習しました。

 

第二章は(市場の狂気)という題からも何となくわかると思いますが、バブルという現象についての考察になっています。

 

お金欲しさのあまり、市場参加者は全員、ファンダメンタル価値理論をあっさりと投げ捨て、砂上の楼閣を築くことで巨万の富が得られるという、疑わしいがスリル満点の考えにとりつかれる。(P35)

 

復習がてらこの言及を要約すると、

 

ファンダメンタル価値、つまりは証券の本質的な価値に関わらずより高く買ってくれる人がいるだろうという判断(砂上の楼閣理論)で取引が行われることによって、バブルにつながるという事でしょうね。

 

それでは、

第二章の内容に入っていきましょう。

 

バブルの歴史

ウォール街のランダムウォーカ―』第二章ではまず初めに、過去にどのようなバブルが存在していたかについて触れられています。

 

この記事では、オランダ・チューリップバブルとイギリス・南海泡沫会社バブルの二つを見ていきます。

 

オランダ・チューリップバブル

17世紀のオランダで起こったチューリップバブルは、ある植物学者によってトルコ原産の珍しい植物(チューリップ)がウィーンの街より持ち込まれたところに端を発します。

 

その後、

市場にも比較的高価な花として定着したチューリップですが、この花はしばしば「モザイク病」というウイルス性の病気にかかることで花弁に縞模様が浮かぶことがありました。この模様は美しいものでありますし、モザイク病それ自体もチューリップにとって致命的な病気ではなかったため、このモザイク柄のチューリップは「ビザール」という呼称で通常よりも高値で取引され始めました。

 

また、

当時の人々にとって異国情緒感じるチューリップの花は一種のステータス商品でもあり、国内需要の高まりを後押ししました。

 

このような需要の高まりとそれに伴う価格の上昇を受け、チューリップのマーケットでは次の流行りを探す動きが活発になりました。さらに、球根の大量仕入れや品種改良等の動きによりチューリップの価格は上昇を続け、その価格の上昇がさらなる需要を呼び込むと言うスパイラルに突入したのです。

 

結果、

チューリップバブルのピーク時(1634~1637年)には、たった一つのチューリップ球根が宝石や土地などと交換されるという事態にもなりました。

 

しかし、

バブルという言葉からも分かるようにこの狂気的な市場は長くは続きません。投機を目当てに買う人々によって球根の価格は上昇し続けていたわけですが、これは裏を返せば球根を高値で買い求める人物が現れ続けない限り持続不可能という事になります。

 

1637年2月、チューリップの売り手は、高騰した球根代金を支払おうとする買い手をもはや見つけることができなくなり、そうと知れ渡った途端チューリップに対する需要は崩壊し、価格は暴落することとなりました。

 

最後にはもはや玉ねぎと変わらない価格にになったとさ。

無念。

 

チューリップバブルについての説明は以上になりますが、このチューリップバブルについて、一つ面白くもとても勉強になる事実を付け加えておきます。

 

 

マッケイによれば、バブル崩壊時点で最後に球根を掴まされていた個人については、代金の支払いを命じる裁判所は無かったという。何故なら裁判官はこれをある種の賭博による負債だと解釈し、法律上強制できないと判断したからである。

引用:チャールズ・マッケイ著『狂気とバブル』塩野美佳・宮口尚子訳、パンローリング株式会社、2004年。ISBN 4-7759-7037-2。

 

これは本当に面白いですよね、

公的な裁判所が投機的なこの取引をギャンブルだと言っているわけですから。

 

投機と投資の違いをしっかりと認識することの重要性を改めて認識しなおすことが出来ますね。

 

南海泡沫会社バブル

「申し訳ありませんが、会社の業務内容は誰にも分からないのです。しかし、大儲けだけはお約束できます」といったとしよう。「これではまるで詐欺ではないか」とあなたは言うだろう。

 確かにその通り。しかし、三〇〇年前のイギリスでは、こういう会社こそ最も人気のある新規公開株だったのである。(P41)

 

 いやいや、

チューリップバブルもなかなかの狂気でしたけど、これも本当ならもう恐怖ですよ。

 

詳しく見ていきましょう。

 

まずは、南海会社とはどのような会社なのかについて説明をしておきます。

 

南海会社はイギリス(当時、グレートブリテン王国)の財政難を救うために、政府の100万ポンド近い国債を引き受け、その見返りに南米貿易の独占権を与えられた国策会社になります。

 

しかしながら、

この南海会社ですが肝心の南米貿易が全く上手くいかなかったのです。

 

え~じゃあ何で利益を上げたの?

 

それが南海計画!!

 

なんだか名前からして怪しいです。

 

この計画については概要がウィキペディアで簡単にまとめられていたのでそちらを引用させて頂きます。

 

1719年、巨額の公債引き受けの見返りに額面等価の南海会社株を発行する許可イングランド銀行との熾烈な入札競争の末に勝ち取った。

 

1. 株と国債の交換は時価で行う。すなわち、南海会社の株価が額面100ポンドにつき市場価格200ポンドの場合、200ポンドの国債1枚と南海会社株100ポンド分で等価交換となる。
 
2. しかしながら発行許可株数は交換額に応じている(200ポンド交換した)ので額面200ポンド分の株が発行できる。すなわち、交換しても手元に100ポンド分、時価200ポンド分余ることになる。
 
3. これを売りに出すと売り上げの200ポンドはそのまま南海会社の利益となる。
 
4. 上記の方法で南海会社の利益があがると、当然株価が上昇する。
 
5. 1に戻る。
 

以上の手順を繰り返すと無限に株価は上昇し、南海会社は利益をあげ続け、株保有者はみるみる豊かになっていく、これが南海計画であった。 

(出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』)

 

 簡単に言うと、

引き受けた国債を株式に、株式を売って利益を上げ、その利益で株価を上げ、さらに国債を変換した株式を売っていくという繰り返しですね。

 

ただ、

皆さんもお気づきだとは思いますが、これって株を購入する人がいないと結局意味がないですよね。

 

もちろんその通りです、

これには当時のイギリスの社会情勢が関わってきます。

 

南海バブル時代のイギリスは、長年の国の繁栄を受け、中産階級がお金持ちになっていました。

 

しかし、

この市場にだぶついた資金を投資するための投資先が少なく、階層を問わずイギリス市民は良い投資機会に飢えていたのでした。

 

そこに登場した国の債務を救ったヒーロー、かつ株価の上がり続ける南海会社という甘い蜜。

 

人々は我が先と投機熱に浮かされこの会社の株を買いあさったのです。

 

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結果、

1株あたりの価格は1720年1月には100ポンド強であったものの、5月には700ポンドになり、6月24日には最高値1050ポンドとなんと約10倍になりました。

 

また、

感染症のようにこの投機熱は南海会社以外の会社の株価にも影響し始め、空前の投機ブームを引き起こすことになりました。

 

市場では、このブームの需要にこたえるかのように様々な企業が乱立し始めますが、程なく政府が規制に乗り出します。

 

すると今までの狂気が嘘のように、悪夢からはっと目が覚めたかのように株価の上昇は止まり、すぐさま株価の暴落が始まったのでした。

 

ちなみに、

このバブルの被害者にはかの有名なアイザック・ニュートンもいたようです。

 

歴史から私達は何を学ぶべきなのか?

後で見るように、仮にウォールストリート・ジャーナルの株欄にダーツを投げて銘柄を選んだとしても、長期的にはかなり高いリターンを上げることができるのである。むしろ難しいのは、短期間に手っ取り早くお金を儲けられそうな投機に、お金をつぎ込みたくなる誘惑を振り払う事の方である。(P59)

 

ウォール街のランダムウォーカ―』第二章から何か一つ最も重要な点を抜き出せと言われたなら、私はこの部分を選ぶでしょう。

 

歴史上何度も、バブルが起きているという事実が示していることは、人間は短期的な利益をどうしても求めてしまう精神性向があるということです。

 

どれだけ、バブルで失敗した人が出ようと、未来において必ず投機的なバブルは起こるのです。

 

一般投資家は、バブルとは破滅へのエスカレーターと考えてその誘惑に打ち勝ち、巻き込まれないようにすることで自らの身を守らなくてはいけません。

 

なかには、

私はバブルがはじける前に売り抜けるから大丈夫だと考える人もいるでしょう。

 

しかし、

同書内ではっきりと以下のように書かれています。

 

”誰も逃げきれなかった”

 

チューリップバブルでは、チューリップの価格が20倍に跳ね上がった、わずか一か月後にはそれ以上の下げ幅を記録したのです。

 

いつ、バブルがはじけるのか合理的に説明がつかない以上、バブルに乗っかってお金を稼ごうとする考えは決して受け入れられないものなのです。

 

長期的なリターンを目指す。

 

一章で学んだ投資とはまさしくそのようなものであったはずです。

 

まとめ

過去のバブル

チューリップバブル(オランダ)

・南海泡沫会社バブル(イギリス)

 

投機の誘惑に負けないこと

 

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

 

備忘録③はこちらから!!

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